第115話 sonny

サンライズ・エクスプレス深夜22時半。

まだ、神様たちの楽しい歓談は続く(笑)。




「でも、アイザック・ニュートンもイジメを

した訳でしょう?」と、フランスの女神。



「そう。ライバルを蹴落とそうとして

研究に打ち込んだ。その情念は

元々母に裏切られた、と言う過去のせいで

劣等感を持っていたからなんだ。

あんなに優秀なのに、劣等感って気持ちわりぃね」と、アメリカの神様は口調が砕けた(笑)。






「SONYを壊したアメリカン、ハワードも、そうだろ(笑)」と、ドイツの神様もからかう。





アメリカンの神様は笑って「あれはイギリス人さ、ドイツのライバルのね(笑)」と言って楽しむ。



ドイツの神様は「ああ、イギリスか」と(笑)って。


元々知っていたのだ(笑)。




日本のSONYを作った井深は、戦争経験者だったが



軍国主義ではなく、ただの研究者だった。



ラジオの開発がきっかけで、SONYを発展させた功労で



終戦後、SONYの品川本社を訪れた昭和天皇と

その喜びを分かち合った。



井深の後を受け継いだ大賀も、日本人だった。


辛い時も、そのSONYを大切にしてきた。





そこまでは戦前の日本人の感覚である。




後を継いだ出井は、研究者ではないので

SONYのそれまでの経緯をよく掴めない。




時代のせいもあるが、SONYを去ってゆく事になり


後を任せた外国人がハワードである。




当然、井深や大賀が大切にしてきたSONYを単純に金銭感覚で割り切る。



SONY品川本社をも、簡単に売却、破壊。



病床の大賀は、壊されていくSONY品川本社を病院の窓から見ながら、失意のうちに死に至る。




もし、日本人の経営者だったらそこまではしないだろう。



心があるからだし、皆が守ってきたSONYへの愛があるからだ。




外から来た人間には、それが分からない。




当然だが、それが


以前の日本人と、今の日本の違いである。





社長、経営者と言っても


ひとりで働いている訳ではなくて

皆のために、愛する対象のために

働いていたのが戦前までの日本の

美しい風習であった。



そのためならば、死ぬ事すら厭わないのが

それまでの日本人である。




でも、損得は守るべき対象ではないから

今の日本人は、虚しさを隠せない。




つまり、本質的に日本人といまの経済は

相容れないのである。




愛すべき対象、それさえあればいいのである。




アメリカンもゲルマンも、アイリッシュも

そうだろう。




それを壊すのは、おそらくは

ニュートンを苦しめた劣等感のような

精神状態であろうし




ひょっとして、放射能汚染はそれを拡大しているのかもしれない。


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