第146話 狂気の悪魔…再び
ここはライブハウス会場、若者…特に十代の学生に大人気な場所だった。
「あ!薫ちゃん!いらっしゃい。入って入って!」
そう言って薫を中へ案内するのは、ここのオーナーの息子だった。
「ありがとう、今日は悪いけど沢山連れてきちゃった…」
「大丈夫!薫ちゃんのお友達なら何人だって大歓迎!」
「ありがとう、みんな入って良いって!」
天斗軍団一行はゾロゾロと中へ通された。
会場の中は大音量と熱気に包まれていて、ライブが始まる前から若者達は踊って騒いでの大盛り上がりだった。
薫はVIP席に案内される。
「ここは特別席だから!」
「お前…いつもこうなのか?」
「そうだよ…」
「かおりちゃんスゲェ!」
かなり大きな声で喋らないとなかなか会話にならない。
急に大歓声が上がりステージには四人のバンドが姿を現す。
「やぁ!みんな!今宵は俺達の為に集まってくれてありがとう~!」
ワァーーーーー!
「今夜もお前達全員を夢の世界に連れてくぜぇ~!」
ワァーーーーー!
「まず始めに、この曲を恋する彼氏彼女達に捧げます!」
ヴォーカルがマイクを通して話し、ノリノリの曲が始まった。場内は盛り上がりを見せ、曲に酔いしれながら会場の観客は身体を揺らす。
そして一人の影が小山内の元へ近寄ってくる。
それは…片桐だった。片桐と言えば、小山内の軍師と呼ばれた非常に計算高い男で、小山内との考え方の違いで今は対抗勢力だった橋本の元に身を寄せている男だ。片桐が小山内の後ろから肩をポンと叩きジェスチャーでこっちへ来てと誘う。
小山内は一瞬驚いたが、片桐の後を追って歩きだす。薫はその姿を黙って見送っていた。
会話が出来る静かな場所まで移動して片桐が話し出す。
「なぁ、最近ちょっと耳にした噂でな…過去に黒崎達と乱闘事件起こした安藤って奴が居てさ…人を刺して殺した罪でネンショウ(少年院)にぶちこまれた奴なんだけど、仮退院で一時的に出られたって噂聞いてな…それがどうも…あのメチャクチャ強い女いるだろ?お前の女…あれの元カレが殺されたっていう話しらしくて…名は武田剛…黒崎の側近って話だ…それと…お前の相棒は伝説の黒崎じゃなくて影武者の方だったって知ってたか?」
その時小山内は、前に薫から聞いた話を思い出した。最愛の人を亡くした…絶対に死なないでというフレーズ…かおりちゃんからしたら仇になる男か…それと、黒ちゃんが影武者…何となくそんな気はしてたが…別にそこはどうでもいい…
「その安藤ってのがクレイジーな奴でな…黒崎とその女にも逆恨みで根に持ってるらしいんだ…一応報せておきたいと思ってさ…」
「片桐、悪いな!それは凄く良い情報だぞ!」
片桐は照れて頭を掻きながら
「せめてもの罪滅ぼしっつーか…こんなことしか俺にはしてやれなくてよ…でも、何かあったら俺達はお前らを全力サポートするつもりだから…」
「悪ぃな…そんときは頼むわ!」
「おぅ、いつでも声かけてくれよな!」
そう言って二人は握手を交わす。
そのまま片桐は出口の方へと歩いていった。
小山内は薫の元へと戻る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます