第58話 玄関会議
「重森…大丈夫だけど大丈夫じゃないって…どゆこと?」
「んー…」
「小山内が送ってってくれるって言うから心配するな!」
「うん…」
「さ、どうする?」
「ごめんたかと君…私達も帰ろ?」
「え?良いのか?楽しみにしてたんじゃ?」
「大丈夫…たかと君…」
「ん?どした?」
「たかと君家行っても良い?」
「え?そりゃもちろん!ちょっと待って、母さんに電話するわ」
すぐに母に電話をかける。
「もしもし?母さん?あのさ、これから彼女家に連れてきたいんだけど」
「え!彼女!あら珍しい。いつの間にあんた彼女出来たの?」
「そんなことはいいから、これから帰るからだいたい一時間位だわ」
「はぁい、待ってるよ」
そう言って電話を切った。
「理佳子、オッケーだ!」
「うん」
二人は遊園地を出てバスに乗り自宅に戻る。
玄関のドアを開けて
「ただいまぁ」
母さんがリビングから興味津々と言わんばかりに足取り軽く出てくる。
「お帰り~!」
理佳子が
「お久しぶりです、理佳子です」
と、挨拶した。
母さんがしばらく理佳子を見て考えている。
「え?理佳ちゃん?あの理佳ちゃん?えー!こんなに美人になってぇ~!あのときはまだ豆粒ぐらい小さかったのにねぇ~(笑)」
理佳子は笑いながら
「おばさんも全然お変わりなくてお綺麗です。」
と、お世辞を言った。
「あら、お世辞まで覚えちゃって」
「いえ、ほんとですよ」
俺はこの二人の会話にに全然付いていけない。
「なぁ、母さん…俺、全然理佳子との記憶無いんだけど何で?」
「えぇ!あんなによく遊んでたのに覚えて無いのかい?なんでぇ」
「なんでぇって…何かのトラウマで記憶を封印しちゃったとか?」
「トラウマ?あぁ~、あの事かねぇ…」
やっぱりみんな知ってるんだ…そして俺だけ取り残されてるのか…
「ねぇ理佳ちゃん、天斗が覚えてないなんて。しかも10年も経ってから彼女ですって連れてきてビックリだわ(笑)」
「私も高校で最初会ったときは忘れてましたから(笑)」
「そう言えばあの娘は?あのぉ~なんだっけ?忘れちゃったけど理佳ちゃんのいとこの…」
「薫です」
「あぁ!そうそう!矢崎薫ちゃんね!」
え?矢崎?いや…重森だけど…
「はい、たかと君と同じ高校なんですよ」」
「あらそう!あと…あの娘のお兄ちゃんの…透(とおるちゃん)!あの子は元気にしてる?」
「はい、透君はトラックドライバーやってるそうです」
「そうなんだぁ、透ちゃんは美香と同級生だったよねぇ」
「そうですね。お姉さんはお元気ですか?」
「うーん、お陰様で就職して一人で気楽にやってるわ、あらやだごめんねぇ…こんなところで立ち話しちゃって、さあ中へ入って」
この井戸端会議ならぬ玄関会議が終わって俺達は家の中へ入る。
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