第15話 この迷い道の先には
一人まだ明け方の森を走っていたヒナタ。少し明るくなった空を見上げて走っていると、足元にあった木の枝に足を取られて、本と一緒にバタンと勢いよく転んでしまった
「痛っ……」
ゆっくりと体を起こして、その場に座り込む。手に付いた土を払い落としていると、少し擦りむいたのか、手や足から少し血が出ていた
「どうしよう……止まんない……」
しょんぼりと洋服で怪我をした場所を拭いていると、本が心配そうにヒナタの周りをグルグルと回り動ていいる
「大丈夫だよ。もう少ししたら止まると思うから。心配してくれて、ありがとう」
ヒナタの言葉に答えるように、手元に舞い降りた本。その本を抱きしめて、また空を見上げた
「アカリ起きちゃったかな……。お母様も心配してるかも……。でも、探さなきゃ私の本……だってあの本は……」
「寝てた……」
ヒナタが転んだ数時間後、いつの間にかベッドで寝ていたアカリが目を覚まし、寝ぼけているのか少しボーッとした表情で、ゆっくりと体を起こしていた
「ヒナタ……」
ベッドに座ったまま部屋の中を見渡て、窓辺から入る日差しに目を細めながら、誰もいない気配を感じつつ、ゆっくりとベッドから降りた
「お母様も、どこ行ったの?」
部屋の中をウロウロと動き回って、レイナや家政婦達がいないか探すが、やはり誰もいる様子がない
「皆さんもいないし……」
しょんぼりと部屋の扉を開けて、家の廊下に誰かいないかと少し体を出して、辺りを見渡てみる
「ヒナタ、探しに行ったのかな?」
夜中、ヒナタを探すと騒がしかった時とは違い、静まり返った家の中。少し不安になりつつも、廊下に移動して、恐る恐る家の中を探し回っていく
「もしかしたらヒナタ、書庫に行ったのかも」
レイナや家政婦達を探していると、ふとヒナタと本のことを思い出して足を止めると、クルリと歩いた道をまた戻るように歩きだした
「ヒナタ、前の本、貰ったばかりだったもんね。だからきっと……」
早足で書庫へと向かってくアカリ。廊下に足音が響いても、誰も来ることはなく、あっという間に書庫の前に着いた
「重い……」
書庫の扉を引っ張って頑張って開けようとしても、非力なアカリには動く様子もなく、何度もドアノブに体重をかけて、少しずつ扉を開けていく
「ヒナター。ここにいるの?」
ほんの少し空いた扉の隙間から、ヒナタに呼びかけるが、返事はない。少し不安になりつつも薄暗い書庫の中にそーっと書庫の中に入っていく
「ヒナタいないかぁ……」
部屋の中を見渡しながら部屋の奥まで進んでく。書庫にも誰もいないことに気づいて、少ししょんぼりしながら、部屋の入り口まで戻ってく途中、ふと本棚の方に目を向けると、その中のとある一冊に、首をかしげた
「あれ?この本……」
と、呟きながら本を取り出すと、見覚えのあるその本を見て、少し驚いた表情で本を開いた
「やっぱりヒナタの本と同じ本だ」
パラパラとページをめくると、たくさんの文字が書かれているその本の中身に少し首をかしげた
「ヒナタの字じゃないなぁ……それに、この文字難しくて読めないし……」
ヒナタを探すことを忘れて、その本を読むことに夢中になってくアカリ。静かな書庫にページをめくる音が聞こえている中、その音をかき消すように、部屋の扉の開く音が響いた
「アカリ、いるの?」
「はっ!はいっ!ここにいます!」
レイナの声に驚き、大きな声で返事をするアカリ。慌てて読んでいた本を本棚に戻すと同時に、レイナがアカリを見つけて、ぎゅっと抱きしめた
「もう、探したわよ。アカリまで消えちゃったのかと思ったわ」
「……ごめんなさい」
レイナの言葉に、アカリがまたしょんぼりとうつ向く
「それより、アカリもヒナタを探しに街に行きましょ」
「う、うん……わかった」
先に部屋の入り口に戻ってくレイナ。その後ろ姿を胸の前でぎゅっと手を強く握って見ているアカリ。本棚の角を曲がりレイナが見えなくなると、ふぅ。と一つため息をつくと、ふと戻した本が目に入った。しばらく本を見つめていると、なにか思い付いたのか、エヘヘと笑って本をまた取り出した
「そうだ!この本、持っていってヒナタにビックリさせちゃお!」
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