お別れをさせて

抜け殻だらけのクローゼットの中に

無数のあなたが見えていたの

顔を洗って 

支度を済ませて

今日のあなたに袖を通すの


約束したこと一つも 守れなくてごめんね

穴の空いた このぼろぼろな服でさえ

掛け違えたボタンも 愛おしく思うような

そんな気がしている


継ぎ接ぎだらけのクローゼットの中で

無謬のあなたが泣いていたの

しわを伸ばして 

比べて 選んで

今日もあなたと生きていくの


上手く言葉なんて 出てこないけれど

言い訳をさせてくれないか

口下手なわたしの 話を聞いてくれたあなたに

お別れをさせて


上手く言葉なんて 浮かばないけれど

この想い届いてくれないか

口下手なわたしの 話を聞いてくれたあなたに

どうか報えるようなことだけでいい

願えば叶うようであるならば

口下手なわたしの 祈りを聞いてくれたあなたに

お別れをさせて


約束したこと一つも 守れなくてごめんね

穴の空いた このぼろぼろな心でも

取れてしまったボタンを 失くしてしまわないように

ずっと握っている

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