はだしのゆうれい

目を凝らしている

暗い夜道をひたすら慣れない靴で行く

一人、躓いた


ふと見上げた雲は高く

踵を上げても掴めもしない

こんな靴は合わないから

いっそ脱いでしまってもいいな


私は裸足のまま 歩き出す

振り返りもしないで夜の向こうまで


私は私のまま 歩き出す

繋いだ手の温もりだけ憶えている

忘れないようにずっと抱えて持っていく



目を凝らしている 街路灯の無い道を

月明かりも無く

一人、呟いた これでよかったのか


私は裸足のまま 走り出す

振り返りもしないで空の向こうまで



ふと想うのは君の顔だ

行くあても無い私だけど

この町には飽きたから

旅に出る そう決めたのだ


嵐は花を揺らして過ぎゆく

私の心も同じように揺らしていく


嵐よ 叢雲を飛ばせ 月を出せ

向こうの灯りで夜を照らしてくれよ



私は私のまま 泣き出す

振り返って、君の待つ灯りの下へ


涙拭って、歩き出した私は幽霊

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