2話 オウジサマに会いました。
「レイラ様をお連れ致しました」
先導をしているリンさんが先に応接室に入り中にいるであろう王子に話している。
俺はリンさんの後について入りそのままドレスの裾をつまんで腰を少し下ろして挨拶をした。いわゆるカーテシーという奴、前世のおふくろが見ていたドラマでお姫様達がやっているのそのまま実行する。チャンネル争奪戦に負けて嫌々見させられていたがここで役に立つとは!ありがとう、おふくろ!!
「本日はわざわざお越しいただきありがとうございます」
それらしい挨拶をして顔を上げると少し驚いた表情の少年と目が合った。
黒髪に紫の目のそれはそれは麗しいお顔の少年がオウジサマだとすぐにわかる。オーラが違う。少年のあどけなさがあるものの将来は絶対モテまくるにちがいない。
うらやましいぜ、こんちくしょう。
「…失礼しました。以前と雰囲気がだいぶ変わったので驚きました。お体の方は大丈夫ですか?」
初めは驚いていたがすぐに笑顔を張り付けて当たり障りのない会話をしてきた。
「もう大丈夫です、わ。えーっと、あの、ちょうど殿下とお話したいことがございました、の。‥‥‥できれば、二人っきりで」
王子のすぐ後ろには護衛が二人ついていた。俺の話を誰かれ構わず話をするのはリスクがある。王子だけに知らせて納得してもらうほうがいい気がする。
「……わかりました」
「では、私達は部屋の外で待機しております」
王子が目で合図をすると護衛達は部屋の外へと出て行った。俺もリンさんに外で待つように言って出て行ってもらった。
「さて、人払いをしてまでお話したい事とはなんでしょうか?」
相変わらず胡散臭い笑みを浮かべて優雅に茶を飲む王子。
「まず、今から俺が話すのは王子にとっては突拍子のない事だと思う」
「俺?」
「うん、実は俺は男なんだ!」
「は?」
王子は手にティーカップを持ったまま固まっている。
「あ、いや。体は女なんだけど、心は男なんだ!!」
「……これはまた、何を言い出すかと思ったら面白い冗談ですね」
「俺が冗談でこんな話をするか! っていうか以前のレイラはそういう冗談をいう子だったのか?」
「…いえ、以前のレイラ嬢は貴族の
「なんとなくこの家の使用人の人達を見ていたらわかるけどワガママなお嬢様だったんだろ?」
「……あなたは誰です? なぜレイラ嬢のふりしているです?」
王子様から笑みが消えて鋭い眼差しが俺に向けられた。
「レイラ嬢のふりじゃなくて、俺自身がレイラで間違いないんだ。ただ、中身が変わったっていうか‥‥。まあ、信じられないかもしれないけど俺の話を聞いてくれ」
俺はそれから以前の俺の住んでた世界の事、事故に合って死んじまった事。死んだ先で女神に会い転生してもらった事をすべて話した。王子は俺の話を最後まで聞いてくれた。
「あなたの言うことが本当の事だとして、以前のレイラ嬢はどうなったんでしょうか?」
「俺も気になって女神サマに聞いたんだけどよー、なんか魂が穢れているからきれいにしてから違う人生を歩ませるとか言っていた。俺の話、信じてくれるか?」
「いえ、荒唐無稽すぎる話ですが、あなたの今のその口調は以前のレイラ嬢とは思えないほどかけ離れています。正直、私も混乱していますよ」
「俺だってさ、ホントは男に転生して俺TUEEEEEでハーレムエンドがしたかったさ!! なのにあのクソ女神が女に転生しやがったんだよ!クソムカつく!!」
「あのレイラ嬢からそんな下品な言葉が出るとは…、やはりここはあなたの言う事は信じるしかないかもしれませんね」
「そうか! よかった!! そこで、オウジサマに頼みたいことがあるんだよ」
「なんでしょう?」
よしよし、最初は信じてもらえるか心配だったがここまでくれば安心して婚約破棄の話ができる!
「やっぱり中身が男なんだしさ、オウジサマも嫌だろ? だから
そう言った俺に王子様は再び胡散臭い笑みを浮かべた。
「それはできませんね」
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