装備は宝箱の中から
ミミックがどうやってか飛び上がり、僕を捉えようと向かってくる。
「【氷矢】! 」
そこで僕は敢えて翼を引くのではなく、魔法を詠唱した。
そしてそのまま掌底。
掌中に留めた魔法を前方に突き出した。
グガップゥゥゥゥ!!
氷の矢は寸分違わず、此方を狙おうと大きく噛みついてきた口内に突き刺さる。
そのまま羽先がポリゴンに包まれ……
ドロップ品だけが翼の中に残った。
「っぶなぁぁぁ…… 油断した、油断した、油断したぁぁ!」
初心者用ダンジョンだと思って、ミミックまでは警戒をしていなかった……
その結果それが仇となり、危うく良質な鶏肉を宝箱にくれてやるところだった。
「はぁ…… 冒険者の心得その26 『ミミックに会ったら狙えるうちに口をぶっ刺せ』がこの世界でも役に立ってよかったぁ……」
ゴブリン一本釣りも含め、前世のギルドで配布されていたパンフレットの内容はここでも一定数使えるようだ。
「さて、気を取り直してドロップドロップ!」
倒したと同時に握りしめたドロップを、手の戒めを解き解放する。
「んー…… これは、首輪……?」
そこにあったのは、黒い鎖模様の布がぐるりと一周し、一ヶ所だけ金色の金具が付いている首輪だった。
「首輪かぁ。何用だろう。んー、取り敢えず効果見ておこっか。 」
使い道が分からず首をかしげつつ、集中する。
するとウィンドウが開きこの首輪の詳細を教えてくれた。
《輪鎖のチョーカー》
装備制限:人間系統種
効果:INT 10アップ AGI 5ダウン
装備スキル:『黒縛鎖ブラックギアス』
連なり輪をなす鎖の首輪。普段は装備した者を縛りつける。しかし、それが他者に牙を向いたとき放たれる手加減無しの拘束はあらゆる者に悪夢をもたらすだろう。
「うーん、なんか不穏。」
でも知力ボーナスと特殊スキルは魅力的なので金色の金具を弄り、首に着けておく。
「あー、ちょっと体が重くなった……? 」
着けると、体が少し重くなった気がする。でも言って気がする程度。
AGIデバフもそこまででは無いようだ。
「よっしゃ、探索に戻りますかぁ!」
そう言って気を取り直し、僕はさっき通ったぐるぐる道を駆け戻る。スピードはやっぱり落ちてるけど…… まぁ大丈夫。
そのまま、道の分岐点でまだ通っていない道を選択。何匹かのワンコロを手早く熨せば……
「階段だぁぁぁぁ!」
僕は最終階層へ続く階段を発見した。
そのまま視界の端のタイマーを確認すると……
残り3:56:14の文字がこうこうと輝いている。
流石我。中々いいペースでやってくることができていた。
「よし、もう一回休息を取ったらボス戦だ!」
気合いを入れ直し、僕はゴツゴツした岩肌に腰を下ろした。
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