レベリング

森へ到着すると、その様子は先程とはガラっと変わっていた。


生暖かいようなゴブリンの気配が全く感じられず、変わりに刺すような冷たさがあちこちに感じられる。




木々を分け入り森の入り口から少し離れた開けた場所に出た瞬間、感じていた気配が鋭くなった。




「ホノカ、見られてるの感じる?」


「え、何が……?」




やっぱり分からないか。




……勘違いかな?




僕自身が、この森に再び入って急に気配を感じるという懐かしい感覚を思い出したから、おそらく前世からの技能が度重なる戦闘によって研ぎ澄まされているのだろうと思っていたけど、気のせいだったら恥ずかしい。




ガサバサッ! ガサッ




「やっぱり来たっ! 」




木々が揺れる音と同時に、気配が迫ってくる。




「【ストレングス】 おっと本当に来たね! 数時間ぶりの戦闘だからちょっとドキドキしちゃう」


「【強弓】【二矢】【火矢】っと。まぁ大丈夫だと思うよ。初心者用の森のモンスターだからね……」




気配が正しかったかは分からないけれど、話しながらスキルを発動し音が近付く一点を見つめる。そしていつでも射れるように弦を引いた。




はぁ緊張するなぁ……




進化してから最初の戦闘だから、ホノカにはこんな風に言ったものの結構不安だ。




「すぅ…… ハッ!」




敵が広場に入ってきた瞬間、空に向かって引き絞った弦を離し高速の矢を解き放つ。




「カ、カァァァァ!!」




光に包まれた二本の火矢は一直線に突き進み、木々の愛だから顔を出した鷹ほど大きな青い鴉と正面衝突。頸動脈と心臓を正確に射抜いた。




ポリゴンと火柱が爆発する。




「やったねライト! やっぱ火力計算バグってるねぇー」


「ははっ、そんな事無いと思うけどなぁ…… でもスキル使い過ぎた感はあるね。ちょっと勿体なかったかも。」




周囲を警戒しながらも近くに気配は感じられなかったので、談笑しながら戦利品を確認する。




「おっ?なになに……《子氷烏の風切り羽》? 絶対氷鴉アイツと関係あるよなぁ」




明らかに氷鴉の子供です! と言いたげな名前を認識しながら、森の出現モンスターが変わっていることを理解する。




「まぁゴブリンの集落潰されてたからなぁ。生態系が変わってても不思議じゃない、か。」




そんな事を考えつつ、ドロップアイテムをしまい、ホノカを振り返る。




「次、行こっか? 」


「そうだね! あっ、後その羽は矢尻に使えると思うから後で良ければ預けて欲しいな? 良い矢に加工してみせるから! スキルも上げたいし、ライトは物理の矢が手に入るから、いい……と思うんだけど」


「そうだね、お願いするよ。あっ、料金は後で払うね? おんなじパーティーメンバー! 戦利品の取り分はできるだけ5:5にね!」




少しだけ早口になった後、上目遣いで見つめてくるホノカに対し依頼を約束する。


考えてみれば報酬についても話してなかったし、どちらも得ができるようにしなきゃ。




そんなことを考えながら森を進み、出会った敵を射止めて行く。




一時間ほど経った頃には、数十匹の子氷烏を仕留めることに成功し、ホノカは進化一歩手前、僕は12までレベルを上げることができた。

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