第6話【素材収集は手早く無駄なく美味しくが原則】
「それじゃあ出発するよ」
朝の準備を終えた僕達は最初の目的地【天象の頂】を目指して移動を開始した。
道中、僕はふと気になりララに聞いてみた。
「ところでララはどのくらい戦えるんだ?」
仮にもドラゴン族のプリンセスだったし、転生で弱体化しているとはいえ、その辺の魔物クラスは余裕だったりして…。
「こっちの世界の魔物や人間がどのくらい強いか分からないから一概には言えないけど、まだ本来の力の1割くらいしか出せないと思うし、ドラゴンブレスでも精々ゴーレムを消し炭に出来るくらいじゃないかな?」
(ふむ、ゴーレムが消し炭か……。
まあゴーレムくらいならミスドやセジュでも一蹴できるレベルだからあり得ない事はないのか?
いやいや、
「そうか、それならば自分の身は自分で護れる力があると見て大丈夫だな。
って言うか、それで1割って元々の力はとんでもなく強いんじゃないか?」
「そうよ。だからもっと尊敬してもいいのよ」
ララは僕達の肩辺りをふわふわと浮きながらドヤ顔をしていた。
「いや、子供竜の顔でドヤ顔されても全然強そうじゃないな」
「なんですってぇ!ならば目にものを見せてやるぅ!!どらごんぶ・・・にゅう!!」
激おこモードのララの頭をミスドがポンと軽く叩きながら威圧をかけて言った。
「まあ、そのくらいにしとくんだな。
タクミは俺たちのマスターなんだから冗談でも危害を加えるようならあんたを肉塊ミンチにすることに
「お、脅したって駄目なんだからね(汗)」
「まあまあ、ミスドもそのくらいにして、ララも本気じゃないよな?」
「あ、当たり前じゃない!気高き竜族はそんな事で取り乱したりしないんだから!」
ミスドの威圧にあわてるララを微笑ましく思いながら進むこと半日、目的地の天象の頂の
「よし、もうすぐ
僕はミルフィに確認を頼んだ。ミルフィは軽く
「今回の目標は『極楽ザメの牙・30㎝以上』ですの。
極楽ザメは霧の中を泳ぐ空中ザメとも呼ばれる体長は数メートルから十数メートルあり、30㎝以上の牙は体長約5メートル以上の素体から採取出来る可能性がありますの。
動きが速いのでバインド系の魔法で捕らえるか、風魔法で霧を払い地面に落としてから剣などの物理で首をはねると素材の傷みも少なくてお肉も美味しく採取出来るの」
ミルフィの説明が終わると僕はミスドとセジュに大まかな作戦を伝えた。
(まあ、ふたりに任せておけば大抵の事は僕の指示無しでもほとんど問題なく任務を完璧にこなしてくれるので非常にありがたく思っている)
「セジュは探察魔法を展開。
発見次第報告してから討伐開始でいこう。
シールとミルフィは待機で、ララはミスド達がどのくらいの実力を持ってるか見ていてね」
僕が指示を出すと皆はそれぞれの行動に移った。
* * *
半刻ほど進んだ頃から霧が発生し、だんだん濃くなってきた。
「目標確認。サイズは・・・10メートルクラス!」
「予想以上の大物か、ミスド、セジュ油断するなよ!」
「「了解!!」」
二人は僕達に先行するとセジュの風魔法を纏まとい、霧を
「目標捕捉!周囲の霧を散らします!ウィンドブレス!!」
セジュの魔法が極楽ザメの周りの霧を吹き飛ばした。極楽ザメは陸に打ち上げられた魚のように尻尾をバタつかせながら地面に墜落してきた。
「今よ!」
「任せろ!!」
『ヒュッ!サクッ!!』
ミスドは落ちてきたサメの首の辺りを目にもとまらない速さで切り上げた。
次の瞬間には極楽ザメは絶命していた。
「ほい、一丁あがり!」
ミスドが剣に付いた血をはらうしぐさをした瞬間、セジュの声が響いた。
「後ろ!もう一匹!!」
ミスドが振り向いて剣を振るったが、極楽ザメの尻尾をかすめただけでかわされてしまった。
「まずい!突破された!」
剣をかわした極楽ザメは僕達のいる方向へ狙いを定めて突進してきた。
「グラビティプレス!」
『ドラゴンブレス!!』
セジュが動きを停めた瞬間ララがブレスを吐いた。
「ガァー!」
新手の極楽ザメはララのブレスをまともに食らってのたうち回っていた。
「後は任せな!」
戻ってきたミスドがのたうち回る極楽ザメにとどめを刺した。
「すまねえ、油断しちまった」
「ララ嬢ちゃん助かったぜ」
ミスドが素直に礼を言うとララは
「こっちに突っ込んできたから思わずやっただけよ。
でも霧で威力が削られたとはいえ、この程度の魔物を消し炭に出来ないのはショックだわ」
とぼやいていた。
僕は苦笑しながら皆に次の指示をだした。
「とりあえず目的の素材は取れそうだから一旦夜営地まで引き上げよう。シール収納をたのむ」
「了解なのだ」
シールに極楽ザメ2匹を収納させて昨夜の夜営地まで戻り、素材の確認をすることにした。
今回討伐した極楽ザメは2匹で1匹は11メートルぐらい、もう1匹は7メートルぐらいだった。
それぞれの牙も40㎝と33㎝で充分なサイズだった。
後は素材回収の為の解体作業だが、最初の大物は問題なく解体出来て『肉』『皮』『牙』『骨』『頭』と切り分けてシールに収納してもらった。
普通はこのサイズの極楽ザメだと精々『牙』と『肉』の一部しか運べないのうえに肉は劣化するので非常に効率が悪くて割に合わない獲物であると言えるだろう。
ただ僕にはシールが持っている
少々、いやかなりズルい気もするがそれで通商依頼を受けたりすることはないので世の中にはさほど影響を及ぼしていないと思っている。
もう1匹のサメはララのブレスで表面はあちこち焦げまくっており、肉も香ばしい匂いがただよっていた。
(とりあえず『牙』は採取したし、これだけ焦げていたら商品価値はあまり無いだろうから、こっちは皆の食事に使うようにしようか)
「ミルフィ、こっちは食べられそうな部位だけ切り分けて僕達の食事に使ってくれ」
「了解ですの」
ミルフィは包丁を片手に器用に解体をしていった。
そしてそれらはその日の夕食となって僕達の前に並べられた。
「極楽ザメのローストに極楽ザメの炙りステーキそれと極楽ザメのスープですの」
極楽ザメ尽くしである。
「おっ旨い!
サメの肉とか、もっと固くて淡白そうなイメージだったけど脂も乗っていてトロみたいな食感だな」
(なるほど、これなら高級食材として取引されていてもおかしくないな)
と考えながら美味しく料理を頬張った。
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