第3話【襲い来る盗賊は殲滅、魔物は食料とする】
「ちょっと待ちやがれ!」
朝に街を出発して昼の休憩をとろうと水場を探していた頃、少しばかり木々で見通し視界が悪くなっている所で少々ガラの悪い男達十数人に囲まれた。
男達はそれぞれ手に剣や槍を持ち、ニヤニヤと下品な笑いを浮かべながら僕達を取り囲むとリーダーらしき男が近づいて来た。
「とりあえず、有り金全部と食料を置いていってもらおうか。
無駄な抵抗はするんじゃないぜ、この人数差だお前等に勝ち目はねえよ。
最もこちらとしてはついでに命も置いていって貰っても構わないんだがな」
なんとも
頭数さえ居れば絶対的優位に立てると考えている筋金入りの脳筋集団である。
しかもどう見ても僕達のメンバー構成や荷物からは商売人や只の旅人には見えないはずである。
そんな僕達を襲ってもリスクばかり高くて儲けなどほとんどないだろうに……。
この人数の盗賊の討伐依頼がまだギルドには無かったので、恐らく他から流れて来た集団が移動中に手当たり次第に襲っているのだろう。
その時、隣に控えていたミスドが半ば呆れながらリーダーらしき男に忠告した。
「悪いことは言わない。全滅したくなければ全力で来たほうがいいぜ。まあ、1人も逃すつもりもないけどな」
「なんだと!?この人数に勝てるつもりか?」
リーダーらしき男が吠ほえた。
僕は『なにも挑発しなくてもいいのに』と苦笑しながらミスドとセジュに命令した。
「盗賊の
「「承知!」」
二人は命令を了承すると直ぐに戦闘体制に入った。
「ご主人様とシールはこちらへ下がってくださいですの」
ミルフィが僕の手を引いて後方の岩影に避難した。
「
「なっ!?なんだと!?」
リーダーらしき男が驚きの声を上げて固まった。
その隙をセジュが見逃すはずも無かった。
「グラビティホールド!」
力ある言葉と共に男は武器を落とし、膝を着いて地面に縛り付けられた。
「がっ!かはっ!」
男が自分の身体の
「たっ助けてくれ!」
男は地面に這いつくばった状態で必死に命ごいをした。
僕は男を一瞥いちべつすると言い放った。
「悪いけど、僕の辞書では悪人には人権は無いんだよ。
地獄の底でしっかり悪事を
そう言い放つとミスドに目線を送り軽く頷いた。
「「盗賊の
ミスドとセジュが命令を終えて戻ってきた。
「二人ともお疲れさん、今回も完璧だったね」
僕は二人を
「悪いけどコイツらをそのまま放置すると魔物が寄って来て、他の旅人に迷惑がかかるから集めて炎魔法で処理をしてくれるかな?」
「了解しました」
セジュはそう言うとファイアーボールで死体を焼きつくしていった。
『
悪事を働く者、特に力にものを言わせて罪のない者から奪うだけの盗賊どもに情けをかける必要はない。
もし、見逃した盗賊が別の人達に危害を加えたら僕はきっと後悔するだろう。
よって盗賊に遭遇したら
なんと言ってもミスドとセジュが居るだけで国の軍隊1個師団でも太刀打ち出来ないくらいの戦力なんだから……。
「さあ、先に進もうか」
そろそろ昼食の頃だったが、盗賊を
* * *
「よし、ここら辺でいいか」
僕達は先ほど戦闘のあった場所からさらに半刻ほど進んだ所にあった水場で昼食を兼ねた大休憩をとる事にしていた。
「さて、今日の昼食は何にするかな?」
こんな旅の途中で食べる食事など普通は簡易食か携帯食くらいで、わざわざ調理に必要な食材や調味料等は荷物になるので持って行かないものであるが、僕達には
「今日は子羊のパイ包みとカナミスの果実酒と…」
ミルフィが出発前に作ってシールの
「マスター、どうやら昼食前にもうひと運動しないといけないようです」
セジュによると、オークが数体近づいているらしい。
【オーク:豚の頭をもつ二足歩行の魔物、知能はそれほど高くないが武器を扱う事に加え人間よりも力が強い為、複数で襲われるとDランクハンターは当然、Cランクでもパーティーで対策を取らないと対応出来ない。追記:肉は焼くと旨い】
「オークか、ミルフィ悪いけど昼食メニューの変更だ」
「せっかく食材が来てるんだからありがたく頂こうじゃないか」
実際、魔物の肉は種類にもよるが旨いものが多い。
しかも魔素を含んでいるので魔力回復薬の素材としても重宝するし、精霊達のエネルギーである魔力薬の精製素材としても必需品なのである。
「仕方がないですの。
シールさん、食事の方はそのまま
ミルフィはそう言うと
まだオークを狩ってもいないのに……。
「出来るだけ素材が痛まないように狩るように頼めるかな?」
僕は隣で剣の手入れをしているミスドに話を振った。
「了解だ。最高の状態でしとめてみせるぜ!」
ミスドはそう言うと手入れをしていた剣を『スッ』と天に掲げて最高の笑みを見せた。
* * *
それから十数分後…。
「前方約100メートル!数7!間違いなくオークの群れですね」
セジュが魔物達の情報を伝えた。
「了解!まかせとけ!」
ミスドが剣を構えて迎撃体勢をとりながら僕に向かって言った。
「オークに限らず魔物全般に共通する倒し方は『首を落とす事』につきるんだが、動き回る奴等の首を落とすのは難しいよな?」
僕達は周りを見ながら
「そんな時はセジュがよく使う『グラビティホールド』とかで動けなくしてから止めを刺すと簡単だ」
『ガサッ!ぐげーっ!』
そんな話をしている時にこちらに気がついたオーク達が手に持った剣や槍を振りかざして飛び込んで来た!
「おっと!」
『シュパッ!ザシュ!!ザシュ!!ドサッ!!!ドサドサッ!!!』
「っとまあ普通ならそうなんだけど、敵の数倍のスピードで剣を振ってやれば首をはねるのは造作もないんだがな…」
ミスドは僕達の方を向いてなにやら魔物狩りのやり方をレクチャーしながら後ろから来ているはずのオーク達の首を次々とはねていった。
相変わらずのチートぶりである。
「ほい、ラスト!」
ミスドが最後のオークを始末した後、セジュが水魔法で血を洗い流し、ミルフィが後で使いやすいように解体し、シールの
「うん。便利だね君たち」
結局、僕の昼食は今回狩ったオークをミルフィが美味しく調理してくれたが、魔物の素材が捕れたのだから皆は各自好みの食事を要求してきた。
ミスドは『魔素酒』セジュは『魔素スイーツ』シールは『魔素お菓子』そしてミルフィからは『魔素紅茶』をお願いされた。
物は違うが作り方は基本的に一緒だ。
僕は精霊の皆の要求は出来るだけ叶えてあげるようにしているので、常に携帯錬金釜はシールに持ってきて貰っている。
魔素酒は『魔素材+アコルの実』で調合する。
味はそれぞれ素材のレベルによって変わるらしい。
僕は魔素酒は飲まないので味はよく分からないんだが…。
魔素スイーツは『魔素材+スイーツ素材』だが、今回はスイーツ素材に『チコの実+じゃあじゃあミルク』を使い甘く作ってあげた。
魔素お菓子は『魔素材+爆裂こーん』でふわふわのお菓子に仕上げ、『岩塩』で味のアクセントをつけてみた。
魔素紅茶は『魔素材+ベニの葉+岩石砂糖』でほんのり甘めに仕上げた。
「「「「マスター、いただきます」」」」
「やっぱりマスターの魔素酒は旨いな」
「そうですね。このスイーツも甘く美味ですね」
「ふわっふわでさくさく、お塩のアクセントが効いてて凄く美味しいのだ」
「ほんのり甘くて優しいお味ですの」
皆は僕の作った食事を満足そうに食べながら目的地について話しあった。
「もう半日進んだ辺りに夜営が出来る水場があります。
そこで一泊してから明日の午後過ぎに目的地の
ミルフィが紅茶を飲みながら、これからの予定を確認した。
「よし、それじゃあ進もう」
僕は皆にそう告げると目的地に向かって歩きだした。
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