第15話 定時できました
さくらはいつものベッド前の定位置ではなく
入口に近い場所にちょこんと座った
俺は
向かい合う形で
少し距離を取る様にベッドの淵に座った
さくらは上着も脱がず
バッグも横に置いて
ソワソワしていた
「意外と早かったね」
俺が視線を合わさないで言うと
「急いで来た
健太郎が会いたいなんて言うから」
俺がさくらを見ると
彼女は視線をあからさまに逸らした
やはり
思い当たる節があるのか?
「会いたいって言ったら会えるなら
もっと言えばよかったね」
そう言って笑うと
さくらは困り顔で
「・・・今日は特別だよ
話しがあるって言うから・・・
会えるのに会わなかったみたいな言い方しないでよ」
そんなつもりで言ってない
だけど
彼女は
俺の言葉を
そんな風に受け取ったんだ
「何?話って?」
小さな声で言う
俺は彼女の口から
彼女の言葉で聞きたくて
少し意地悪な言い回しで問う
「何だと思う?」
さくらはこちらを見て
「なにそれ・・・教えてよ
私、聞きに来たんだよ・・・急いで来たんだよ」
声がうわずっている
何を焦っているんだよ!!
そんなに声を震わせて
柄にもなく必死だね
「いや、さくらなら
今日の話し
見当がついているんじゃないかって思って」
冷静に
できるだけ
優しい声で言う
「分からないよ
何が言いたいか・・・人を試すような言い方は
よくないと思う
何かあるなら
話があるって言ったんだったら
ちゃんと言ってほしい
何?
悪い話?」
俺は少し笑ってしまう
さくら
どういうつもりなんだろう?
もし
兄さんとよりが戻ったんだったら
こんなに必死になる必要なんてない
隠そうとしてる
俺に事を知られたくない
と言う事は
俺が思う様な事ではないのかもしれない
両親はさくらの事を気に入っていたから
妙な期待で先走ってしまっただけかもしれない
兄さんだって
元カレ
元カノ
の関係になっても
友達しているだけかもしれない
ココは
変に追い詰めるのではなく
ちゃんと事情を聞き
受け入れた方が良いのかもしれない
嫉妬心で
兄や彼女を睨みたくない
そう考えを巡らせていた時
さくらもそれまで困り顔で考えていたけど
何かを決心したような表情で
こちらをしっかり見て話し始めた
「分かった
私が思い当たることを話す」
その決意のよう語り口調は
何か切り札でも切るかのようで
俺はさくらの表情にドキッとする
心の中で
俺は願っていた
どうか
どうか、さくらの話すことが
俺が腹を立てたことが馬鹿らしくなるような
最後には笑って
俺がバカだったな
って思えるような
そんな話でありますように・・・
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