第12話 嘘
親に頼み込み
大学の近くに引っ越した
決して新しくはないけど
清潔感のある二階建てのコーポの一階
角部屋
この辺は大学が多いから
他の住人はみんな
近隣の大学生だった
「最後の一年半
しっかりゼミで研究したいから
終電とか気になるのが嫌だから
大学の近くで住ませてほしい」
親に嘘をついた
親は
たった5駅だし
通えない距離ではないから
家から通ってほしい
と言っていたけど
助け舟は
やはり兄から出された
「俺も大学三年の後半から
論文と就職活動が大変で
大学近くで暮らす友達の家に泊まることがあったし
そういうの、けっこう大変だから
部屋借りてやってよ
敷金と引っ越し費用は俺が出すからさ」
そう言って
親を説得してくれた
行いの良い兄の言う事は
両親もすんなりと耳に入るようで
直ぐにОKが出された
引っ越しの日
「頑張れよ」
兄さんは
本当の理由を知らない
俺がさくらと一緒にいたいから
一人暮らしをすることを決めたのに・・・
後ろめたかった
「兄さん・・・」
俺が思いつめた表情だったんだろうか?
兄さんは先に
「分かってる
言わなくていいよ」
何が分かっているんだろう?
さくらのこと・・・まさか
「彼女でもできたんだろ?
学生生活もあと少しだし
青春して来い!!」
爽やかに背中を押してくれた兄は
きっと
その相手がさくらだってことは知らない
もし知ったら
どう思うかな?
嫉妬なんかするのかな?
だけど
振ったのは兄さんだし
分かったとしても
いつもの余裕の笑顔で
「そっか頑張れよ」
なんて背中を押してくれるのかもしれないな
俺はいつもと変わらない
優しい兄さんの笑顔を見て
真実は知らないまま嘘に加担させた事を思い
罪悪感で一杯になっていた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます