俺と妹のアニメ語り お互い語っているだけなのにアニメがもっと楽しめるなんてすごくない?

そらから

第1話 ルーデウスは一人前か? ――アニメ『無職転生』第11話「子供と戦士」

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本話には、アニメ『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』の第11話「子供と戦士」の内容を含みます。

未視聴の方はお気をつけいただければと思います (´・ω・)

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 習慣になったのはいつからか、正確には覚えていないけれど、アニメ語りが俺たち兄妹の日課だ。毎日必ず話すってことはないけど、面白いアニメを見た次の日はついつい話したくなる。昨日は大好きな無職転生の最終回だったこともあり、俺から興奮気味に話しかけてしまった。


「とりあえず、予告で分かってはいたけどロキシー再登場は熱かったなー」

「分かる。昔師事した師匠が改めて登場するっていうシチュエーションはいつの時代も熱い。でも、このワクワク感は2クール目からが本番な気がする」


 妹の結菜ゆなは活発的なタイプじゃないけど、アニメを語るときは静かに熱く語る、と思っている。抑揚なく話すけど、心の中ではめちゃくちゃ燃えているのが分かる。

 腰まで伸びている長い黒髪が犬のしっぽよろしく動いたりはしないんだが、水のように澄んだ目の奥には見えない炎がふつふつと燃えている。体はそこまで大きくないくせに、アニメを語るときだけは大きく見える時がある。


 俺も結菜もアニメは何でも見るほうで、異世界系はもちろんのことファンタジー・SF・ギャグ系・ラブコメ・日常系と何でもいける。未だにプリキュアも見ている。

 ちなみに、プリキュアは子供じゃなくても楽しめる。結菜も高校1年生なので魔法少女に憧れるっていう年齢ではないけど、変身願望とか関係なく作品として楽しいといつも言っている。それには俺も同意する。なお、プリキュアが魔法少女じゃないとかそういう細かい話は置いておく。


「今更だけど、異世界系はこのいかにも異世界って感じの雰囲気がいいよなー」

「分かる。アニメだからこそだけど、音楽もいい雰囲気。オープニングっぽくないオープニングが地味に好き。手法自体は私達が知らないだけで使い古されたものなのかもしれないけど」


 これはなかなかの発明だと思っている。物語に一体化させるような感じでそのまま垂れ流す感じが、このアニメを一気に気に入った理由だ。アニメと言えばオープニングアニメーションが流れ始めるのが普通だけど、あえて物語と一体化させる感じで流すのが通って感じで良い。実際、作品観ともよくあっている気がする。


 ところで結菜はよく「分かる」という言葉を使う。結菜が強く否定するところを、俺はまだ見たことがない。

 正確には否定することもあるんだけど、本気で強く当たられていないというのが正確なところだと思う。もう何年もこうやって話せているのは、ひとえにこの性格のおかげなんだろうと勝手に思っている。

 毎日当たり前のように話しているけど中学になるまでは実は会話が殆どないぐらいに距離をおいてしまっていたから、改めて当たり前になったんだなといい意味で思う。



「ところでさぁ、今回サクッと見殺しにしたことをルーデウスは悩むじゃん? でも、それを軽く流す感じがすげー嫌な感じだったんだけど分かる?」

「分かる。これからはみんなと相談して決めることにしよう、がむかついたんでしょ」

「そう。だってさぁ冒頭知り合いを実質見殺しにしてるわけじゃん? で、悩むわけよ。そこまでは良かったんだけど、それに対する解決策の提示が次からは頑張ろう的なことになっているのって気持ち悪くない?」


 俺は結構感情的にアニメを見るタイプで、妹に対してまずは同意を求めてしまう癖がある。あれはおかしかったよね、熱かったよねという感じに。今回のルーデウスは、難しい理屈は抜きにしてなんかむかついたのだ。だからいつも通り結菜にはその感情をぶつけてしまう。

 対していつも結菜は大体「分かる」と返してくれるのだが、時々鋭く切り込んでくることがある。


「ルーデウスの中身は転生前の中の人の気持ちがまだ残っていて、弱い部分がある。

それによって上手く行かないことがあることを描くということをやりたかったはずなので、分からなくはない。ただ、見殺しにしたことに対する解決策を、話し合うという、方法論が間違っていたというレベルで語っているのが気に食わない」


 感情が込められていないように聞こえるかもしれないんだけど俺には分かる、これはとても憤っているのだ。強い意志を持って、目の奥に感情を鎮めつつ言ってくる感じと言えば伝わるだろうか。このモードに入ると結菜はよく喋る。心なしか髪も逆立っている気がする。


「良くも悪くも、ルーデウスという主人公が未熟であるということを示唆しているのかもしれない。表面的に受け取ればルーデウスは成長した、だけども実際はただの子供であることが分かるという二重構造になっているのではと。それ自体は、そういう描き方をしたいということなのだから理解はしないといけないけれど。でも、気に食わないことは変わらない」


 言っていることは多分正しいんだろうなとなるべく理解しようと聞いているが、いつも頭がパンクしそうになる。とはいえ俺とタイプが違うだけで、お互い熱くなっているのは間違いないので、頑張っていつも聞いている。俺がアホなだけなのだ。


「まぁ、話全体としてはようやく一歩進んだ感はあるな。3人パーティーがちゃんと動き出したっていうか。1クール目はもう終わっちゃったけど」


 そう、もう終わってしまったのだ。もっともっと続きが見たかったのだが仕方がない。しかし、エンディングに面白そうな話を突っ込むのはやめてほしい。 面白そうな話をなんで本編に突っ込まないのか……。


 ちなみに、昔別のアニメで妹に言われたのは「アニメ化にあたって尺が足りないから」というシンプルな答えだった。

 アニメではない媒体で書かれたものをアニメ化するのだから、当然そのままアニメ化したら尺がおかしくなる。だから色々調整する……いや、分かるけどさぁ、分かるけども、でも割り切れないんだよなぁこればかりは。

 だって、面白い内容だったらやったほうが良いじゃん、って思ってしまう。説教臭い話よりもスカッとする話が俺は読みたい。今回は本編にむかついたからいつも以上にそう思うのかもしれない。ルーデウスの葛藤はちょっとでいいから、もっと冒険譚を見せろと。


「分かる。きっと、原作では描かれているのかもしれない。でもさっきも言ったとおり今回の話のポイントはルーデウスの成長だから、カットされたんだと思う」


 こういうふうに物語を構造的に捉えて評価するっていうのが俺は苦手なんだけど、確かに理屈を聞いたらなんとなく納得はできて、作品への理解が深まる気がする。ただ、俺は苦手だからいつも結菜に任せている。結菜さまさまだ。


 結菜と話していて気づくのは、アニメっていうのはやっぱり一人で見るだけじゃ分からない楽しみ方っていうのがたくさんあるってことだ。

 もし結菜と話さずにアニメを見ていたら、きっと気づかなかったことがたくさんあったに違いない。一人で見ることが悪いわけじゃないけど、いろんな視点を入れて考えられるっていうのは、話し出して初めて分かったことの一つだ。一人で見るよりも何倍も作品が好きになるからやめられない。



「しかし、分割2クールは罪だよなぁ。こんなに終わりの引きが気になるのに、次見れるのが早くても夏っていうのが信じられんわ」

「今更そんなこと言っても仕方がない。4月からまた死ぬほどアニメが始まるんだから、そっちを見ておけばいい」


 まぁそのとおりではあるんだが……。話の終わりは、大体こうやって結菜に窘められてしまうのである。




 では恒例の、俺たち兄妹の評価を載せて終わろう。次回もよろしく。



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評価:★★★☆☆

理由:

内容は面白かったけど、ルーデウスがむかついたから星3つ!

でも、2クール目は楽しみ!

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評価:★★☆☆☆

理由:

人が死んだことに対して、良くも悪くも淡白だったことが気に食わない。

ルーデウスが悩んで成長する糧に使われたことが明白すぎて、そういう見せ方が苦手だと改めて認識。

でも2クール目は楽しみ。

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