第14話 過去の記憶と現実 V
あの日、バイトは休みだった
僕は自分の部屋で勉強していた
なぜか、全く頭に入ってこないことを感じていた
体全体がだるくて、僕の体の真ん中で黒い液体が渦巻いているのを感じていた
赤い血液の中に渦巻いていた黒い液体がサラサラと素知らぬ顔で流れはじめていく
どんどんとその比率は増していき僕のカラダの色が指先から黒く変色していく
僕のカラダの真ん中、腹の辺りから黒い液体がブクブクと沸き続け
心臓の拍動に連れ去られサラサラサラサラと静かに流れていく
その黒い液体に侵蝕されて僕のカラダの色がどんどんと黒くなっていく
それに伴って徐々に僕のカラダの体温がどんどんと下がっていく
僕はそれをどうにかしなくちゃと焦ったのはなんとなく覚えている
少しずつ記憶をたどってはいたが、そこから先の記憶が全くない
多分、僕の理解をはるかに超えてしまう事柄が僕自身の中に起きてしまい
それに僕の脳が対応しきれなくなり、僕の脳が僕自身を守るために
非常事態宣言を発動し、僕のカラダにそうするべく電気信号を送ったのだろう
カラダは素直にその電気信号に従い、僕はあの状況下にいたのだろう
「お母さんが見つけなければ、お前、死んでたぞ」
父親が僕に語り掛けた後、僕の目を真剣にまじまじと見た
母親が僕を見つけていなかったら、僕はどうなっていたのか
そんな事、その時の僕には全く分からないことだ
ただただ、僕の脳が発した命令にカラダが正直に反応しただけの事だから・・・
僕がその父親の目線にピンと来ていない事を察知したのか
「まあ、いい。とりあえず体を治す事だけに専念しろ」
「じゃ、仕事に戻るから。あんまり余計な事考えるなよ」
そう言ってゆっくりと立ち上がり
去り際に僕に少しだけ微笑んでこの場を後にしていく
父親の何気ない優しさを感じつつ、僕に起こっていた事実を伝えられ
正直訳の分からない状況の中、時間だけが刻々と通り過ぎていった
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