第234話 Aランクになって

「おっ、コルネくんじゃないか。これ、ささやかだけどAランクになったお祝い──受け取ってくれ」

「ありがとうございます」


 俺のAランク昇格というニュースが王国全土に知れ渡るのに時間はかからなかったようで、俺が書状を受け取った数日後には街の人は皆知っていた。


 先ほどもたまたまお店の前を通りがかっただけだというのに、八百屋のおじさんから野菜をもらった。このところ、街の人たちからお祝いをもらってばかりだ。


 ヘルガさんも買い物に行くたびに俺の昇格祝いだと未だによくおまけしてもらっていると言っていた。やはり俺と師匠とヘルガさんがここで暮らしていることは周知の事実なのだろうか。


 Aランクに上がってから街の人に祝福される以外に変わったことといえば、いろんなところから手紙がきたことだろうか。


 アドレアはいろいろあってサラさんのところに通っているそうだ。アドレアはサラさんの魔導書を幼い頃から読んでいたから、きっとサラさんと初めて会ったときは嬉しかっただろう。


 それにサラさんの得意な系統は「とっておき」と言っていた「ゲヘナ」から考えるに、おそらく火。アドレアも火系統の魔法が得意だったから気が合うことだろう。


 マリーはルミーヴィアで頑張っているようだった。レネさんたちとギルドの隅で毎日練習していて、回復魔法も順調に上達しているらしい。ときどきミャクーに帰ってパパやアルノさんの様子を見てきてほしい、とのことだった。


 ローランやレオンさんの道場の友人からも祝福の手紙が来ていた。ローランは早く闘いたいがアクスウィルの授業が詰まっていて行けそうにないと書かれていて、可笑しくなってしまった。本当にローランは変わらないな。


 レオンさんのところで一緒に修行をしていたメンツから何人かが山にモンスターが出たときにパーティとして行けるほどには上のグループになったと書いてあった。なんでも俺が教えた魔力操作で下剋上が起きまくっているらしい。


 たくさんの人から手紙が届いて実は少しだけ──ほんの少しだけエミルからも連絡があるんじゃないかと期待していた。


 これだけ噂になれば、俺がラムハにいることもきっとエミルに伝わるはず。手紙を出すための住所は分からないだろうが、ラムハでコルネという人物を探せばきっとすぐ俺に辿り着く。


 だから、もしかするとエミルが訪ねてくるかも──なんてことを思って待っていたが、少なくともここ何日かはなかった。俺の話を聞いてすぐに出発したとしたらもう着いてもいいはずだが、これからも待ちつづけていたらいつか来るだろうか。


 何か来れない事情が──いや、もしかするともう…………やめよう。これ以上は考えたくない。

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