第229話 挑戦を終えて
ダンジョンで魔力結晶を採った俺たちは予定を前倒ししてその日のうちにラムハへと帰った。師匠の申請では次の日までいることも可能だったが、魔力結晶の入った袋を持ち歩くのはとても目立つ。
しっかりと袋の口を閉じているため中身は見えないものの、動かすたびに聞こえてくるからからという音は日常的に運ぶようなものではないと周囲が分かるには十分だ。その中の誰かが「二人組が魔力結晶を大量に採っていった」という情報を持っていれば、中身の特定は容易だ。
魔力結晶は魔法使いにとっては喉から手が出るほど欲しい代物だ──そんなものが大量にあるとなれば、結託して大勢で寝ている間に襲ってくる可能性もあるため宿屋に泊まるのも憚られた。
ラムハに帰る途中、少し遠回りにはなるが王都まで寄ってもらい、冒険者ギルド本部に書類を提出してきた。これであとは結果を待つだけだ。
「コルネくん、長旅お疲れ様──ということで乾杯!」
帰ってきた次の日、ヘルガさんがご馳走を作ってくれてお疲れ様会を開いてくれた。師匠と帰ってから改めて全部のモンスターを倒したかのチェックもしたし、Aランク昇格はほぼ確実だと思うのだが、万が一ということもある。とりあえず今はお疲れ様会ということになっていた。
「長旅といっても、ちょくちょく帰ってきてたのであんまりそんな気はしませんけどね」
「それでも二十日は十分長いよ」
たしかにそれもそうだ。師匠とどこかに行ったときだって二十日もここを離れたことはなかった。
「どうだった? 今回の旅──というか討伐クエストの日々は」
「いい経験になりました。初めて見るモンスターばかりで──このモンスターはこういう動きをするんだとか、見た目に反して素早いんだとか、いろいろ分かってよかったです」
特にマンドラゴラといった探すのに時間がかかるタイプのクエストはこういう機会でもないと受けなかっただろうな。いつもは基本的にさくっと倒してささっと帰るスタイルだから。
「それと──ヘルガさんに来てもらえなかったら、俺はあのままペースを落として取り戻せないところまで行っていたと思います。あのときは本当にありがとうございました」
「気にしなくていいですよ。クエストの繰り返しで精神的にきつくなるのは他のパーティでもよくあることですから。特にコルネくんは一人なので大変だったと思います」
すました顔でそう返すヘルガさん。手紙の文字だけで俺の精神状態を看破した彼女が何者なのかは分からないままだ。
「それにしてもすごいよね──定期的にこっちに帰ってきてたのに、十日以上残して終わらせるって。一日二体倒すとか普通のパーティじゃまずやらないよね」
「えっ……そうなんですか?」
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