第163話 任務を終えたコルネ

 ヴィレアへ向かう道で師匠と別れた後、俺は脚に力が入らなくなってしまい、動けなくなってしまった。


 師匠がヴィレアに向かって緊張が解けたからだろうか。ペースを落とした途端に今までよりも大きな疲労感がどっと押し寄せるのを感じた。


 しばらく休息をとった後に、少し急いでギルドまでやって来たら、やはり師匠はずいぶん前に山に向かったと聞かされた。


 二つあるBランクパーティのうち、片方の盾使いを道案内として連れていったそうだ。きっと土地勘のある人なんだろう──それなら方向音痴の師匠でも山で迷うことはなく安心だ。


 ギルドの冒険者にだいたいの状況を聞いてから、整理する。


 師匠と盾使いは山に入って、盾使いの欠けたBランクパーティは他の冒険者たちとギルドで留守番、もう片方のパーティは山からオーガが下りてこないかの見張り。


 なら俺が取るべき行動は見張りだろう。おそらく師匠は、盾使いの欠けたパーティはオーガとの戦闘に対応できないと判断したのだ。


 オーガが山から下りてきたという報告は来ていないそうだから、まだ大丈夫だと思うが、見張りのパーティがオーガを止めるのに手いっぱいで報告に行くことが出来ないという可能性もないわけではない。


 なるべく早く向かった方がいいだろう。




 着いてみるとやはりというかそんなこともなく、見張りのパーティは間隔をあけて四人で森へと目を光らせていた。


 俺が見張りに来たとメンバーの一人に告げると、向かって右の端に行くように言われる。そして遠くにいる他のメンバーに何やらジェスチャーで伝えると、右にいる他のメンバーが少し大きくなる。


 こんなに離れているのにジェスチャーで伝わることに感心しながら、俺は自分のポジションへと走る。


 位置についたところで、俺はしばらくは息を整えていたが、体力も回復してきたところでだんだん暇になってくる。


 緊張感をもっていなければ、という気持ちはあるのだが、森は静かすぎるくらい静かでオーガなんて出てくる気配はない。もしかしたら師匠がオーガを探すときにモンスターを狩ったからなのかもしれない。


 それに聞くところによれば、体重が人間の何倍もあるオーガはのっしのっしという足音がするらしいから近づけばすぐに分かるはずだ。


 することがないので、今日は出来ないかもしれない修行のメニューをしてしばらく待っていると、左の冒険者が走ってきて師匠がオーガを倒して山から下りてきたと告げにきた。


「素振りで気合いを入れてるところ悪いんだが、オーガはもうロンド様が倒したらしい。もう下山されてギルドに向かわれてるらしいから、俺たちも戻ろう」


 メニューの素振りが気合いを入れるためだと勘違いされていたが、「暇だから修行をしていた」とは言い出せなくて訂正はしないまま、一緒にギルドへと走りだした。

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