第145話 新しいメニュー 其の三(ロンド視点)

 最初からベースは変わっていない修行メニューをコルネくんは余裕でこなせるようになっている。だからメニューのレベルを上げよう──ここまではよかったのだ。


 収穫祭でコルネくんに頼った分、ここは師匠らしく新しいメニューを完璧に考えよう。そう思って、初めて考える自分以外のメニューを模索しながら作った。


 練習用の剣まで注文して、これで完璧──とまではいかなくても微調整をするくらいで済むと昨日までは思っていた。


 僕の予定では、コルネくんが「きついですね」と言いながら汗だくでメニューを最後までやって、食後に「今日は疲れたので早く寝ます」と言ってベッドに倒れこむくらいのメニューになっているはずだったのだ。


 それなのにコルネくんは最初の素振りの途中でフォームが崩れてしまい、休憩が必要なほど疲弊している。


 これは明らかに加減を間違えてしまっていると気付いた。原因は一つしか考えられない──新しい練習用の剣の重さだ。


 しかし、剣の重さもよく考えてから注文したはず──座り込んでいるコルネくんの隣に置いてある剣を持ち上げてみる。


 少し振ってみて重さを確かめてから、またコルネくんのところへと戻す。それから自分の部屋に戻って、僕の剣といつも使っている練習用の剣の二つを持ち上げて比べる。


 部屋の中なので気をつけながら剣をブンブンと振って考える。うーん、さっきの剣はもっとブンブン振り回せたからこっちの剣の方が重いか──じゃあこの剣は?


 コルネくん用の練習用の剣、僕の剣、僕の練習用の剣──この三つの重さを比べて導かれた結論は……やってしまった、ということだ。


 コルネくんに渡した練習用の剣は、僕の普段使っている剣よりもおそらく重い。僕が練習用で使っているものよりは軽いが、いきなりこれを渡したのはどう考えても無茶だった。


 重さはオーダー通りに作ってくれたはずだから自分の剣が想像以上に軽かったこともショックだったし、せっかく作ってもらった剣を今すぐは使えないことにも落胆してしまう。


「とりあえず、腕を使う筋トレは今日はなしで……他の筋トレだけするよ……」


 ため息をつきながら告げる僕に、コルネくんは不思議そうな顔を向けるのだった。

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