第60話 王宮にて
────レンド王国、王宮にて。
冒険者ロンドから話を一通り聞いた後、職務室に戻り、国王は安堵のため息をついていた。
「どうかされましたか」
その場にいた側近が分かりきった質問をする。いつも国王は愚痴を吐きたいときには、側近の前でわざとらしくため息をつき、質問をされるのを待っているのだ。
「巨大なモンスターのことだ。皆ロンドに反感を持ったりしないだろうか」
「まさか──国王様がロンド様の言葉を信じるとおっしゃったのですから、そんな者が出てこないでしょう」
「だといいのだが……」
たしかに余の言葉は一定の抑止にはなるだろうが、あくまで余は信じるというだけであって、信じない者は処刑などという話ではない。
当然、ロンドの話を信じずに、ほらを吹いている叛逆者だと思う人間も中にはいるだろう。そのような者たちがロンドたちに危害を加えでもしたら────最悪この国は終わってしまうかもしれない。
この国は国の騎士団や魔法師団に加えて三人のSランク冒険者に守られている。特に師団一つに相当するようなSランク冒険者は重要で、各所に配置することで、他の国からの戦争を抑制している。
本来なら、全て王国直属の者だけで戦力を賄うのが道理であり、一個人に国防を任せるなどもっての外であるのだが──現実問題として戦力が足りていないのだから仕方がない。
危うい戦略であることを承知の上で、この三人にはなるべくいい条件を提示して王国に残ってもらうようにしている。
特にロンドには商業の拠点となるラムハに常駐してもらうことで、街の安全を各国にアピールし、行商人の行き来を活発にさせている。
つまり、何かの事情でロンドがこの国から出て行ってしまえば物流が滞ってしまう可能性があるということだ。国の滅亡と直結しているわけではないが、深刻なダメージを受けることは確かだろう。
だからロンドに危害を加えようとする馬鹿者がいないことを願う。ロンドは他の二人に比べ、Sランク冒険者になったのが最近というのもあって、軽んじられている
「そういえば、あのロンドが連れていた…………あの──」
「コルネ様ですね、ラムハでドラゴンの幼体を討伐したという」
「そうそう、あのコルネという弟子はどうなのだろうか。やはり強いのだろうか」
残りの二人の道場からは毎年騎士団や魔法師団に弟子が送り込まれているから、期待してしまう。
「あれ以来、目立った活躍は聞きませんね」
「そうか……」
もし将来強くなったとしても騎士団や魔法師団には入らんだろうしなぁ……あまり戦力としては関係ないかもしれないが、彼がいることでロンドは多少この国から離れにくくなるくらいか。
ロンドの弟子の話が一度流れたことを知っている身としては、彼が立派に成長するのを願うばかりだ。
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