第三章 ティオール森林編

第42話 冒険者会議

「本日はお集まりいただきありがとうございます。今回も進行は私、レナードが務めさせていただきます」


 ロンド含めSランク冒険者の三人は冒険者会議に呼ばれていた。


「今日の議題は主にモンスターの異常発生についてです。現在、ティオール森林でモンスターが大量に発生しており、騎士団と魔法師団、冒険者が対応しています」


 ここまではこの場にいる誰もが知っている。対応は前回の会議で決まったことであり、モンスター発生の話は市民の間でも広く知られている。


「ここからは極秘なのですが、モンスターが異常発生しているのはティオール森林の西側だけのようなのです」


 出席者がにわかにざわつく。ティオール森林はレンド王国とドリュファス王国の国境である山脈の裾野にある森だ。山脈を超えたドリュファス王国の側には異常がないということは、異常発生がドリュファス王国の仕掛けたものである可能性が出てくる。


「それでドリュファス王国側から森に入り、調査をすることに決まりました。その依頼をロンド様、あなたにお願いしたいのです」

「ちょっと待ちな。どこにロンドである必要があるさね。調査なら国の諜報を使えばいいんじゃないかねぇ」


 レナードの言葉にサラが口を挟む。


「そうしたいのは山々なのですが、モンスター相手では実力不足という話になりました。パンはパン屋と云うように、モンスターの専門である冒険者に任せるのがよい、と」

「なるほど、それは確かにそうさね」

「そして向こうに気取られずに調査したいため、お三方のうちあまり顔が知られていないロンド様が選ばれたというわけです」


 納得した素振りを見せるサラ。


「どうでしょうか、ロンド様」


 表情を変えずにレナードが聞くが、選択肢などないことは皆分かっていた。この依頼は国の重鎮が話し合って決めたこと──ならば断わるということはすなわち国に背くことである、と。


「謹んでお受けいたします」

「その旨、伝えておきます」


 レナードが用意されていたように応える。




 森の調査依頼の後、ギルド間での要請やポーションの量などの毎回話されるようなことが議題に上ったが、その間もどこかぴりぴりしているような空気は消えなかった。


「では、これにて会議は終了させていただきます。念押しになりますが、調査の件は極秘ですので他言しないように。皆様、改めまして本日はお集まりいただきありがとうございました」


 * * *


 冒険者会議が行われている頃、国王が目を通していた書類を置き、一息つく。


「さて、どこから漏れるか……」

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