第14話 修行の成果
「なんで、なんで……みんな抜けていくんだ! マリー、エミル……」
魘されて目が覚める。この夢を見るのはもう何度目だろうか。
マリーとエミルがパーティを抜けてもう一週間が経とうとしている。俺はまた討伐クエストがしたくて、冒険者の募集をした。紙を出したときに、ギルドのお姉さんには困った顔をされたけど。
でもだれもパーティに入りたいという冒険者は現れない。理由もなんとなく分かっている。
この小さなギルドに登録している人は多くない。全員がおたがいに顔見知りだ。
だから俺のパーティが瞬く間に全員が抜けたのをきっと知っている。
そんなパーティにだれが入りたいと思うだろうか。パーティに入りたい冒険者は出てこない──いくら待っていても。
そんなことは分かっているけど、パーティを抜けて家に帰りたくはない。せっかく憧れの冒険者になったのに、俺のせいでパーティメンバーが全員抜けてしまったなんて言えるわけがない。
もうすぐ持っているお金が尽きる。俺はどうすればいいのか……教えてよ父上……
* * *
師匠がサラさんを連れてきた日からだいたい一か月が過ぎた。
サラさんたちが帰った後は、また以前のようにひたすら練習をした。ただ、以前に比べて魔法の制御が安定してきたので、以前は少しだった剣の稽古の比重が増えた。
魔法の発動もずいぶん慣れてあまり疲れなくなってきたので、時間は短くなったけど回数自体は増えている。
炎以外にロンドさんに教えてもらった水、雷、風、土、氷も実戦で使えるレベルにはなった。
元々使っていた炎の魔法では、ロンドさんの魔法剣のように剣の長さを変えることが出来るようになった。変えるといっても俺の小指の長さくらいだが。
もう何年も使っていた炎の魔法剣で、たった一月の修行で新しいことが出来るようになるとは思っていなかった。やはり誰に教えてもらうのかは大事なのだと近頃よく思う。
師匠との剣の稽古も以前に比べればかなりレベルが上がった。
最初は俺が打ち込むのをただ師匠が水の魔法剣で受け止めていたのだが、今では型稽古をしている。あらかじめ決めていた動きをするもので、アルノ兄さんとしたことがあったが、お互いに魔法剣を使っているので難易度が跳ね上がっている。
師匠が使う魔法を見てそれに有利な魔法を纏わせ剣を受けたり、師匠が使っている魔法を見て有利となる魔法に切り替え、切りかかるのだ。
ひと月前と比べ、俺は成長しているのを自覚している。しかし相手のある稽古は相手を全て師匠がやっているので、どれだけ成長したかが分からない。
俺はそろそろモンスターと戦って腕を試したいと思うようになっていた。
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