美南、猫になる

「猫ちゃん、捨てられちゃったの? 連れて帰ったら美月怒るかなぁ……でも放っておけないし。うちの子になる?」


 あぁ、これは夢だ。近くで見ていたいという私の願望が叶ってしまった。なんて素晴らしいんだろう。


「陽葵ちゃん、拾ってきちゃったの?」


 目の前には、困り顔の美月さん。困り顔、可愛すぎます……!


「雨も降りそうだし、可哀想じゃん。こんなに小さいのに」

「生後どれくらいかなぁ……どんな状態か、ペットショップで見てもらった方がいいよね。ごめんね、猫ちゃん。ご飯はもう少し待ってね」


 もう、いくらでも待ちます! 陽葵さんに抱き抱えられた私を慈愛に満ちた目で見て、恐る恐る撫でてくれた。

 はぁ、幸せ。



 与えられたミルクを飲み終えて顔を上げればニッコニコな笑顔で私を膝に乗せる美月さん。顔を動かせば、横には不満顔の陽葵さん。

 あぁ、ごめんなさい! 決して、決して、美月さんを取ろうとした訳では無いのです……!


「美月ばっかりずるい。猫ちゃん、こっちおいで」

「みゃ!?」


 私ですか!? もちろん行きますとも!


「あー、行っちゃった……」

「この子頭いいね。ちゃんと言葉が分かってる」

「そうだね。名前どうしようか?」

「みーって鳴くからみーちゃん」

「え、うん……まぁ、陽葵ちゃんがいいなら……みーちゃん、よろしくね」


 みーちゃん……! なんて素晴らしい響き。美南だし、あだ名で呼んでもらえているみたいで嬉しい。


「陽葵ちゃん、みーちゃんどこで寝てもらう?」

「まだ弱々しいし、今日は寝室に連れていこうよ」

「確かに、しばらくはその方が安心かもね」


 寝室……!? えっ、いいんですか? 入っちゃっていいんですか?


「あ、みーちゃんも嬉しいのかな。しっぽが揺れてる」

「本当。可愛いね」

「美月って猫好きだったんだね。優しい目してる」

「犬派だったんだけど、猫も可愛いね」

「美月が猫みたいだもんね」

「え? 私猫っぽい?」

「うん。懐かない猫って感じ」

「陽葵ちゃんは犬だよね。甘えん坊な子犬」

「わんっ」

「えっ、かわい……」


 あぁー!! すき。何この甘い空間!? やばぁぁ。


「可愛がってくれてもいいよ?」

「……っ、誘ってるの?」

「さぁ?」

「みーちゃん、ちょっとごめんね」


 美月さんに優しく抱き上げられて、対面のソファの上に降ろされた。え、ここでいいんですか? 見えちゃいますけど。なんのご褒美ですか?


「陽葵ちゃん、もう1回わんって言って?」

「わん」

「かわい……」

「ふーん、みつきたん、こういうの好きなんだ?」

「……っ、ニヤニヤしないで」

「今度コスプレしてあげよっか? 何がいい? 好きなの着てあげる」

「え……」

「なーんてね」


 コスプレ!? そういうプレイまであるんですか? あ、今日じゃない? 残念……


「もー、そんなに余裕なのも今のうちだからね」

「ふふ、ムキになって可愛い」

「ちょっと黙って」

「……んっ……みつき……」


 キャー!? 見ていいの!? これ見ていいの? MVでしか見た事のないキスシーン……! ここで目が覚めるとかは絶対やめてよ!?


「みゃ!?」

「わ、みーちゃん大丈夫!?」

「嘘、落ちた?? 平気?」


 私の馬鹿ァァ……! 乗り出しすぎてソファから落ちるという……

 邪魔してごめんなさいぃ……落ちても、猫なので大丈夫です。気にせず続きを、って、そんな感じじゃないですね。本当にすみません……


「大丈夫そうだよ。ちゃんと着地できたみたい。小さくても凄いね」

「良かった。みーちゃん、おいで」

「なんかみーちゃん元気ない? 落ちちゃってびっくりしたのかな?」

「あーあ、みつきが盛るから」

「えぇ……だって陽葵ちゃんが誘うから」

「また夜ね?」


 ぐっは……!! はい、好きです。ありがとうございます。推しのペット最っ高!! 来世は推しのペットになりたいです。



「陽葵ちゃん、歩ける?」

「んー、だっこぉ」

「仕方ないなぁ。みーちゃん、ついてこられるかな?」

「み!」

「ふふ、偉いね」


 はぁ、至福。お風呂上がりに髪を乾かしてもらった陽葵さんが目を擦りながら甘えている。そんな陽葵さんを、美月さんは優しく笑って、慣れたように抱き上げた。

 寝室について行って良いらしいのですが、本当にいいのでしょうか? 盗み聞きしてしまった扉が目の前に……入っちゃいますよ? 大丈夫ですか?


「みーちゃん、来ないの?」


 陽葵さんをベッドに寝かせた美月さんがドアを押えながら聞いてくる。よし、入りますよ? いいんですね?



「み……ちゃん、美南ちゃん」

「今行きます……! あれ?」

「はは、どこ行くの?」

「え? 寝室に……あれ?」

「寝室? 夢の中でも寝てたの?」

「あー……いい所だったのに……」

「そんなにいい夢だった?」

「はい、それはもう……」

「初夢がそれじゃ、いい1年になるかもね。ほら、美南ちゃんも着替えないと」

「はい……美月さん、王子みたい」

「そうかな? さっき望実ちゃんにも言われた」


 寝起きでボーっとしていたけれど、はっきりした視界に飛び込んできた、新年1つ目の歌番組に出るための衣装に着替えた美月さん。王子。

 他にもズボンのメンバーは居るけれど、1番似合ってます!


「あの、美月さんって猫買う予定ありますか?」

「猫? うーん、今のところ無いかなぁ。でも可愛いよね」

「来世は美月さんと陽葵さんの家の猫になりたいです」

「……疲れてる? この後歌えそう?」


 心底心配そうにされてしまった。申し訳ない……


「陽葵さんも来てるんですよね?」

「うん。さっきリハ終わったって」

「今日はどんな衣装でしょうね」

「あー、うん、どんな衣装だろうね」

「もしかしてもう知ってます??」

「うん、まぁ……」

「見たいです!!」

「もうすぐテレビで見れるよ」

「え、もしかして見せられない感じの写真ですか!?」


 なんとなく、美月さんが見せたくなさそうで、余計気になる。


「そんなことは無いんだけど……みんなには内緒ね?」

「もちろんです!! ……やっばぁ!!」


 可愛すぎでしょ……天使かな? メイクをされている所をマネージャーさんが撮ったのか、鏡越しにウインクしている陽葵さんの写真だった。何がなんでも美月さんと並んでもらわなくては。


『楽屋の前で待ってる』

「美月さん! これ!」

「うん? あ、来てるんだ。美南ちゃんも行く?」

「もちろんです!!」


 まだ着替えてないけど、こっちが優先!!


「お、早い……みつきたん、王子?」


 美月さんがドアを開ければ、陽葵さんが全身を眺めて一言。ですよね。


「なんでみんなそう言うかな……」

「いいじゃん。王子。かっこいいよ」

「ありがとう。陽葵ちゃんは可愛いね」

「私も王子が良かったなー」

「間違いなく似合うだろうね」

「交換する?」

「しません」

「お家では?」

「持って帰れないでしょ……」

「じゃあ、似たようなの買う?」

「買いません」

「えー」


 現実こっちの2人も尊いです……!

 夢でも現実でも、尊い2人のそばにいられて、素晴らしい1年のスタートをきれた気がします。

 今年も沢山のイチャイチャを見守らせてください!

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