永遠を寄越せ

 夜の公園で、彼女に別れてほしいと言われた。終わりは解っていた。僕と彼女じゃ感覚が合わない。漬物石みたいに重苦しい僕、風のように身軽な彼女。繋ぎ止められるなんて最初から思わなかった。けど、僕は僕なりに彼女を愛した。彼女の負担にならぬよう縛らぬよう。繋ぎ止められなくても、彼女に何かを残したかった、だから。


「いいよ、でも、代わりにコレを受け取ってね」


 僕はナイフで心臓をえぐり出し、彼女の小さな白い手に乗せる。月明りと街灯の中、僕の血飛沫と心臓はぬらぬらと妖しく光る。


 彼女は驚愕に目を見開き嘔吐する。僕は生き絶えながらほくそ笑む。


 僕は彼女の永遠の一部を、命と引き換えに手に入れた。




 Twitter300字ss第三十四回お題……「渡す」(本文291文字)

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