本読みする

遠い夜の音読を

誰かがきいている

ひと言、ひと言

時折躓きながら発する、私の痩せた声を

黒眼一つ動かさず

誰かがきいている

どこかできいている


詩は

流れのままに私の頭をすり抜け

ひたすらに喉を響かせ

読む声は

闇に吸い込まれ

再び文字となって紙面に写る


寂しい男のなく声が

廊下を踏み鳴らす乙女の影が

この闇へ失われ

私はどこかの

ある一点を見つめる瞬きをうかがいながら

ひと言、ひと言

だれかに向かい

文字を声でなぞりつづけ



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