だい〝さんじゅうさん〟わ【徳大寺聖子×山口まとめ@でんわ密談中】
その夜——
突然スマホが鳴り出す。徳大寺聖子のスマホが。それは山口まとめからだった。
「なにかあったんですか?」
〝あの後今川くんと何か話した?〟
「いえ、べつに」
(まだ安達さんのこと気になるのかな?)と思う徳大寺聖子。
〝やっぱり今ひとつ頼りにならないわね〟
「それはどういう?」
〝徳大寺さん、あなたが会長になるってこと、了解済みよね?〟
「向きじゃないと思ってるんですけど、一応了解です」
〝その言い方、今ひとつ不安よね〟
「わたし団体を仕切った経験が無いんですよね」
〝そんなことだろうと思ってアドバイス〟
「会長の心得、とかですか?」
〝会の新たなる名前を明日までに考えること〟
「なまえ?」
〝合併になるんだから当然でしょ!〟
「言われてみればそうですよね。でもそれわたしが決めちゃっていいんですか?」
〝それが会長権限!〟
「いいのかな、みんなの意見きかなくて……」
〝安達さんの意見も?〟
「あっ、合点がいきました」
〝今川くんも言ってたよね? 『今は未来ぜよ』って〟
「よく覚えてますね」
〝考えてみればあの安達さんが今川くんと『ふたりだけの秘密を共有』するはずも無いし、言いたいことならどうせわたし達にも言ってくるでしょ〟
「はぁ」
(約束を破っただの騒いでいたのはなに?)と内心でだけ思う徳大寺聖子。
〝今にして思うとアレは『先の先を考えておいて』って意味かもしれない〟
「今川くんがそんな深謀遠慮するかなぁ」
〝しないに決まってる!〟
「……」
〝だけど無意識に正答にたどり着いたってこと。言わば天然系の才人タイプよ〟
「誉めているのか、けなしているのか……」
〝もちろん誉めてる。いい? 会長が徳大寺さんになるのが〔ただの先〕で、〔ただの先のその先〕が会の名前。そういうことだから〟
「一人で決めるなんて、心が重いなぁ……」
〝なに言ってるの? こっち側だけで決めるなんて言ったら、ういのが何を言い出すか〟
「……そうですよね……わたし一人で決めた方がマシか」
「そう! 安達さんを序盤で圧倒して思い通りにはならないってことを示しておかないと後で仕切られっぱなしになるからね。その点今川くんは頼りないんだから〟
「えー」
〝えー、じゃないの! それからさ、〝ただの先のその先の先〟もあるんだけど〟
「どこまで先に行くんです?」
はあっ、とため息ひとつの徳大寺聖子。
(一方的な注文だけして一方的に切っちゃうし、まったくしょうがないなぁ。まとめ先輩は)
徳大寺聖子はその辺の紙を引っ張り出し文字の書いてない面を表にしてひたすら考える。考えるだけじゃなく調べ物も。
(けっこう面倒だなぁ)
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