隣の席だった彼女に告白を
佐瀬 碧
告白
クラス替えや席替えという青春イベントをどう思うだろうか。
新たな出会いにワクワクする人や友達の輪が崩れることを心配する人など、人それぞれ思うことがあるだろう。
僕、
僕には好きな人がいる。
あの日、入学したての1年生のときだった。隣の席に彼女がいたのは。流石に挨拶はした方がいいだろうとコミュ力の低い僕なりに頑張って挨拶をした。すると彼女はとても可愛らしい表情をして挨拶に応じてくれた。このときはまだ好きという感情を抱いてなかった。
その後、幾度となく訪れた席替えで隣になることはなかったが、同じ班になることが多かった。だが、コミュ力の低い僕は自分から話しかけることはなく、ただ係の仕事で業務連絡をするくらいだった。
2年生になって、彼女と別のクラスになった。最初はなんとも思っていなかったが、次第になにか”物足りなさ”を感じるようになった。きっとこのときから好きという感情が芽生え始めたのだろう。
そして3年生になったとき、彼女はまた隣の席にいたのだった。そしてまた挨拶をすると彼女は「1年生のとき同じクラスだったよね?」と言ってくれた。今までにないほど嬉しい気持ちで満たされ、僕は彼女のことが好きなんだと思い知った。
そして、席替えで同じ班になることがあっても相変わらず僕は自分から話しかけることができなかった。彼女も友達との会話を弾ませて僕たちの会話はやはり業務連絡くらいだった。
こうして迎えた、中学校生活最後の日。僕は思い切って彼女を放課後の教室に誘った。
「話って何かな、鷲見くん」
しばし沈黙が流れる。
「あ、あのっ!...高辻さんっていま付き合ってる人とかいるんですか?.........」
目を丸くする彼女。僕もすでに頭が蒸発しそうだ。
「えっ?!...付き合ってる人...そんなのいないよ......」
嬉しい気持ちの反面、もう逃げ場がないと感じた。
ここまで言ってしまえば彼女もこのあとの展開が読めてくるだろう。
一気に恥ずかしさがこみ上げてきた。
「............」
「............」
............っ?!
ふと身体が柔らかい感触に包まれる。
驚きのあまり声も出ず硬直してしまう。
「ねぇ鷲見くん」
「えっ......?」
「告白、しようとしてくれたんでしょ...?」
気づかれていた。
「私ね、鷲見くんのことが――」
状況を把握できないまま彼女は言った。
「――好きなんだ」
「えっ......?!」
「だから付き合おう?」
それから数年が経った。
「佐奈はどれがいい?」
「千春くんの好みでいいのに」
「えー?じゃあこれにしようかな」
「ほんとにいいの...?こんなに高い指輪で」
『隣の席だった彼女に告白を』
完
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