EP.30
午後になった。
「ツナグ、"あふたぬーんてぃー"とやらの準備をしようか」
「うん!」
林太郎とツナグが、そんな会話を始めた時だった。
「ツナグー!」
ツナグを呼ぶ女性の声が、玄関から聞こえてきた。
「あ! ルイだ! 今行くよー!」
ツナグは、玄関へと駆けて行く。
悟は、その後ろを少し遅れてついて行く。
剛は、ルイとツナグの声を聞いて、部屋から顔を覗かせた。
「やぁ、ルイ! あ!この匂いは、キャロットケーキだね!?」
玄関にたどり着いたツナグは、そう言ってルイに声をかける。
「こんにちは、ツナグ。大正解。一緒に食べようと思って、持って来たの」
ルイは、キャロットケーキの入ったカゴを少し持ち上げた。
そんなやりとりを見ながら、林太郎が間に入る。
「こんにちは、ルイ。ちょうど今から、あふたぬーんてぃーの準備をしようとしていたんだ」
「こんにちは、林太郎。素敵ね。私もお呼ばれしたいわ」
「もちろんだ。ルイも一緒にどうぞ」
「林太郎! それなら、ルイがくれたハーブティーも出そうよ!」
二人と一匹は、和やかに話を進める。
そんな彼らに、剛はそっと近づいた。
剛を見たルイは、優しい声で剛に話しかけた。
「剛さんこんにちは。この間の鮭の切り身はどうだった?」
「あぁ、あれは好評だったよ。感謝する。ありがとう」
「それはよかった」
二人のそのやりとりを見て、ツナグと林太郎は驚くそぶりを見せた。
「二人は、いつから仲良しさんになったの!?」
ツナグは、びっくりした感情をそのまま言葉に乗せて問う。
「俺が、図書室の本を読んでる時に、知り合ったんだ」
「そうね。剛さん、あの頃よりも表情が柔らかくなったわ」
ルイが、優しい笑みを浮かべる。
「さ、詳しい話は、そのキャロットケーキをいただきながら話そう」
林太郎の言葉に二人と一匹は頷くと、テキパキとアフタヌーンティーの準備を始めた。
「これにお菓子を載せるのかぁ……なるほど」
そんなことをぼやきながら、林太郎はティースタンドにセットしたプレートにお菓子などを載せていく。
ツナグと剛も、「これはこっちがいいんじゃない?」「いや、こっちだろう」なんてやりとりをしながら、一緒にプレートに載せていく。
そんな彼らを時々優しく見つめながら、ルイはハーブティーを準備した。
「さて! 完成だ!」
準備ができた彼らは、それぞれ椅子に座る。
ルイは、ハーブティーの入ったティーポットをテーブルに置いて、ティーカップを準備する。
「今日は、このカップがいいわね」
「賛成!」
ルイの言葉に、ツナグが即座に反応する。
「ありがとう、ルイ」
「あら。いいのよ、林太郎。カップは、私が選びたいの」
そう言って、ルイはカップを並べた。
「さて、いただきましょうか」
ルイの言葉に、ツナグははち切れんばかりの笑顔を見せた。
「いただきます!」
互いのここ最近の出来事を話していく三人と一匹。
「あの二人は、元気にしてるかなぁ?」
「そうね……。あの二人は、向こうの世界で再会したみたいね。林太郎の子孫と二人の三人で楽しそうに話をしているのが見えるわ」
「そうなのかい!?」
「私の子孫も一緒とは、嬉しいねぇ……」
そんな会話をしながら、穏やかな時間が過ぎていく。
優しい風が窓から流れ込む。日差しはあたたかい。
時間はゆっくり穏やかに流れていった。
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