第9話 デート後の夕食

 カフェデートが終わりマンションへと着いた時には仁とルーシーは疲弊しきっていた。


 仁に関しては疲れ切った体を投げるように自分の部屋のベッドへと飛び込みそのまま枕に顔を埋めていた。


 夕食の時間になるまでそのまま仁はベッドで眠りについていた。


 仁が目覚めたのは午後六時、仁は部屋を出てリビングへと向かうとルーシーはとっくに夕食を作っており、仁はルーシーに後ろから声をかけた。


 「今日は何ば作りよっとね?」


 「きゃっ…………」


 後ろから声を掛けられたルーシーはビクッと背筋が凍り付き刹那、体が硬直した。


 「驚かさないでよ……そうだ、驚かした罰としてちょっと手伝ってよ」


 「はいはい」


 仁はルーシーに言われた通り、料理を手伝ったりと本来なら面倒くさくてしないことを同棲してから初めて共同作業をしていたのだ。


 この時間は二人にとっては些細なことかもしれないが愛おしくも思っており、二人の心は無意識のうちに満たされていた。


 夕食は豚の生姜焼き、味噌汁、納豆、白米に鮭とまたもや日本食を振る舞ってくれたのだ。仁はルーシーに言われた通りに盛り付けをし、間違っているとルーシーに「そこはもう少しこう寄せて……」等指摘をしていた。


 「やればできるじゃない。仁もある程度料理できた方が女の子にモテるわよ?」


 「そうね?僕ちゃん褒められると伸びるタイプやけん本当にモテちゃうかもしれんばい?」


 仁はそう言うとルーシーは「そうなってもらっては困るわ……」っと頬を赤らめ、嫉妬交じりに苦言を呈する。


 「まぁ、婚約者がいる以上このサングラスを外すつもりもないよ」


 「私と二人でいるときだけでも外してくれないかしら?」


 ルーシーは光を失っていた瞳を潤わせながら上目遣いで懇願する。


 「そんなに俺の顔見たいとね?お世辞にもイケメンじゃないけんメリットはなかばい」


 仁は素顔を晒すことに躊躇いを見せ、ルーシーは「それでもいい」と抵抗はないようだ。寧ろ、二人で写真を撮った際に見えた女性のように可愛らしい顔立ちを見ていたいとも思っていたため素顔をもっと見ていたいとものだった。


 夕食をテーブルへと置き、二人はテーブルで食事を取る。


 仁はルーシーの要求通りサングラスを外し食事を取るのだが、ルーシーの瞳は普段光りが失っていたのに仁の素顔を眺めることができているからなのか瞳はとても輝いており、楽しんでいるようだ。


 「そんなに可愛い顔しているのにサングラスなんてする意味ないんじゃないかしら?」


 「このサングラスはマブダチから贈られたものである以前に情けない過去を捨てるために必要なものなんだ。簡単に自分の顔を他人に晒したくはない……」


 仁は自身の容姿に自信がないようで、可愛いと言われることに抵抗があるためサングラスで顔を隠していた。


 親友から贈られたサングラスであるため肌身離さずに生活をしたいのだが、ルーシーはそんな親友にとらわれている仁にもう少し自分らしさというものを持ってほしいと思っていた。


 「それにしてもルーシーの料理は美味しかばい。この料理を食べられる俺は幸せもんたい」


 「話を逸らさないでよ……仁はもっと自分に自身持ちなさいよ。あなただって普通にしていればいい顔しているんだから……」


 「でも、俺はヨハンや紫龍とかと比べるなら全然イケメンじゃないとよ。あいつらと肩を並べて歩くことを考えたらこの不細工なツラは晒せんばい」


 仁は自身の容姿を卑下し、ルーシーは仁をここまで精神的に追い込んだ人達が許せずにいた。ルーシーも今では美少女認定されて学校では数多くの男子に告白されているが自分の見た目だけで物事を判断している男子に嫌気がさしていたのだ。


 大半の男子はルーシーの顔と体が目当てで告白していることが目に見えているため尚更だ。


 男子に免疫のないのもあるため、付き合ったとしても長続きする自信がルーシーにはなく、仁が自身の容姿に自身がないことに「そんなことはない」と言いつつも自身と重ねたのか否定することができなかった。


 「ごめんなさい……仁は結構気にしているのに私ったらわがままばっかり言っちゃって……」


 「気にしてないばい。二人っきりの時は極力この顔を見せることにするよ」


 仁の気持ちに気付けなったルーシーは俯きながら細い声で謝り、仁は頬を赤らめながらも微笑して見せる。


 二人はピュアながらも雰囲気は和んでおり、バカップルという言葉がお似合いなほど相性は良好だ。


 「というか夕食だけどいつの間に買い物に行ったとね?」


 「仁が帰ってきた後すぐに昼寝してたでしょ?その間に買い物に行ったわ」


 「そうね。って、何で俺が昼寝してるの知っとるとね?」


 「声かけても反応がないからドアを開けてみたらあなたが寝ている様子が見えたのよ……」


 仁は何故自分が昼寝をしていたことを知っているのか不信感を抱き、ルーシーはそんな仁の不信感を拭うために頬を赤らめながら説明をする。


 仁とルーシーは食事を済ませ、二人は自分で食べた分の食器を洗っていた。


 (やっぱり仁って改めてみると女の子みたいな顔していて可愛いかも……でも、仁が私の言葉を真に受けて本当に女の子にモテて私から離れたら私はどんな気持ちになるんだろう……仮初の婚約をしているわけで仁と私の関係なんて……)


 ルーシーのこの気持ちは一体何なのかは分からないが少なくとも仁のことが嫌いでないのは確かだ。


 それは仁も同じで、仁もルーシーに対する気持ちが学校にいた時よりも好印象を持っているのは事実で明日からの学校生活をどうすればいいのか二人は頭を抱え悩ませていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る