魔物

 ある男。

 ひとつだけ願い事を叶えてくれるという魔物を探して、広い国中を歩き回っていた。


 その日、男は道端で、石に腰かけている老婆にあった。

 男はたずねた。

「ひとつだけ願い事を叶えてくれる魔物を探しているのだが、知らないか」

 老婆は耳に左手を添えて、もう一度、言うようにうながした。

「婆さん。知っているなら、魔物のいる場所を教えてくれ」

 老婆はうなづき、「それがおまえの願いかね」とたずねた。

 その言葉に、男は慌てて、「知っているのか。そうだ。教えてくれ」と大声で願った。

 すると、「願いを叶えてやろう。おまえの目の前にいたぞ」と言いながら、婆さんは魔物に変じて、大声で笑いながら、どこかへ飛んで行ってしまった。

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