棺桶

 満月の日の真夜中になると、その墓場では、地中から鋼鉄製の棺桶が、ドリルのように回転しながら地上へ現れる。

 そして、棺桶の中から、ひとりの男が姿を見せ、自分の収まっていた棺桶を振り回しはじめるのだった。

 それから、暗闇が薄れるころ、ひとしきり暴れまわった男が棺桶の中へ戻ると、棺桶は錐のように地面に穴をあけ、再度、土中深くへ消えていく。


 男のために、人々は満月の夜には墓地へ近づかない。もともと、用事などないが。

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