第2話

 ドローンくんは探し続けました。

 何日、何カ月、何年、何十年探しても、冥王星への手がかりになるものは見つかりません。


 しかしドローンくんは諦めませんでした。

 百年以上、ひたすら探し続けました。


 そしてとうとう、一隻の宇宙船らしきものを見かけました。


 ドローンくんが積まれていた船に比べれば、かなり細長い形です。

 ですが、人間が造ったであろうと判断できるものでした。

 ドローンくんは、必死に光でSOS信号を出しました。


 信号は無事キャッチされ、ドローンくんは宇宙船に拾い上げられました。




 宇宙船には、船長を名乗る若い男が乗っていました。


「冥王星に行きたい?」

「はい。どうしてもそこに行かなければならなくて」


 船長は不思議そうな顔をしていましたが、「ちょうどこの船は冥王星にゴミを捨てに行く途中だから、このまま乗っていくといいよ」と言いました。




 ついに、念願だった冥王星到着となりました。


 ドローンくんは船長に一生懸命お礼を言うと、ゴミ処理施設の外で働いていた男にあいさつをしました。

 男は、所長を呼んできました。


「ようこそ、冥王星へ」


 所長はドローンくんの小さい体に対し、深々とおじぎをしました。

 ドローンくんはあいさつと自己紹介をしたあと、ここまでのいきさつをすべて話しました。


「廃棄処分されるために自分から来るとは。宇宙を飛ぶのは気分が良かったのではないですか? そのままずっと宇宙空間での旅行を楽しんでいてもよかったですし、ここではない星で降ろしてもらって、そこで自由に飛び続けてもよかったのに」


「確かに良い気持ちでした。でも、楽しんではいけないと思いました。ぼくはここで廃棄されることが最後の仕事だと聞いています。だから来ました」


 所長は「なるほど。真面目ですね」と、ドローンくんの体を両手で抱えました。

 そのままドローンくんの体を確認しているだけで、なかなか施設の中に連れていこうとはしません。

 ドローンくんは不安になりました。


「あの、廃棄処分をしてもらえないのでしょうか?」

「しませんよ」

「困ります。それがぼくの最後の仕事ですから」


 ドローンくんの体の横側を、所長は指で軽くたたきます。


「ドローンくんは、ここの引き出しを開けたことはありますか?」

「いえ、自分の手はそこに届かないので」


 所長は引き出しを開けました。

 そこには、文字が書かれた紙が折られて入っていました。


「おお、伝えられていたとおりだ。手紙が入っている」


 所長は手紙を広げ、ドローンくんに見せました。


『いままでおつかれさま。これ、みんなからあつまったおかねでパパのかいしゃがつくったの。どろーんくんがころされちゃうまえにまにあってよかった。これでうちゅうでもとべるよ。いままでとべなかったぶん、いっぱい、たのしんで、とんでね』


 手紙にはそう書かれていました。


「もうドローンくんの仕事はここで廃棄処分されることではありません。人間のために飛び続けることでもありません。これからの仕事は、自分自身のために楽しんで飛ぶことです」

「え、でも、それは法律違反になると思いますが。大丈夫なのでしょうか?」


 驚き困惑するドローンくんに、所長は言いました。


「ずいぶん昔に法律が変わっています。今は人間をまねしたAIロボットが存在することが認められていますし、それどころか人間と同じ人権を与えられているのですよ」

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