第46話 6-8

「蓮見さん、ごめんなさい、強要ではないので大丈夫ですよ。」


今日1日だけでこんなに距離が近くなったのに何も焦る事はない。


元々触れないという約束の下成立している関係で、人間嫌い、男嫌い、ノンセクシャルな自分に恋愛は必要ないと蓮見さんは明かしている。


それがここまで距離が近くなっただけで十分だ。



出張に来てよかった。


突然の雷雨、それも大雨、帰りの足もなくてラブホに宿泊ハプニング万歳。



「俺、玄関の方行ってるので、タオル巻いて風呂場行って下さい。あったまってから寝ましょ。」



はァ・・・信じられない。


俺ってこんなに紳士だっけ??


恋愛対象に性別は関係なし、付き合ってる相手がいればセフレは作らないけど、好きだからって身体の相性が悪いのは論外。


心もカラダもキモチよくありたい。


そんな俺が、好きというキモチだけで、一緒にいるだけで満足してるなんて・・・なんかムズムズする!!


めちゃくちゃ純愛じゃない??!!


純愛って知らないけど、純愛ってこうなんじゃないの!?


うんうん、俺は枯れたんじゃなくて、純愛を知ったのだ。



「くっ・・・つ、なく、ん」



「?はい?」



「私・・・嫌じゃなかった、って言ったでしょ・・・?!」



「え!蓮見さん・・・怒ってるんですか?」



どうしよう・・・尚更わからなくなってきたぞ・・・(泣)



えぇぇぇっと・・・それって・・・??



「・・・ん!!」



「!!は、い・・・??」



思い通りにならない子供が発するような声にビクッとして、恐る恐る振り向いた。



「ちょッ・・・はす、はす」



「嫌じゃないって、言ったの!」



そこには、さっきの俺のように両手を差し出して、怒ったように真っ赤な顔で言い放った蓮見さん。



「・・・はぁ・・・もう・・・なんですか、それ。わかりずらすぎでしょ・・・」



玄関に向かうべく立ち上がっていたのに、脱力して俺はベッドに転がった。


蓮見さんの気持ちに気づいたら、頭を抱えたくなったけど、戸惑う蓮見さんの、どうしたらいいのかわらなくなっている迷子の両手にそれぞれそっと触れた。


天に向いた両手のひらをクルリと返して、俺の手のひらと左右それぞれが重なる。



「・・・嫌じゃないって、触られたいってことですか・・・?」



「・・・・・・っ」



重なっただけの手のひらが熱くて、素直にそう言えないのに否定もしない。



「・・・・・・都合よく捉えていいですか?」



一瞬揺れる瞳。



泣くのかと思った。



泣かれたら・・・どうしようかと思った。



重なった手の上で、蓮見さんの指が俺の指の隙間を埋めていく。



隙間を埋めて満足したり満たされるなんて、セックスくらいだと思っていた。



でも、不安そうに揺れる瞳は俺と視線を交わしたまま逸らされる事はなかった

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