第8話 2-6


「中高生の時もそう、通学のバスも電車も車両を変えても時間を変えてもいつも痴漢に遭って・・・あの人もそう・・・馴らしてあげる、教えてあげる、愛してる、大好きだよ、そう言いながら、体を触りたがって、拒否をすれば・・・・・・自分のを握らされた・・・なんで・・・?どうして・・・?男なんてみんな汚い・・・本当に嫌っ・・・」


そして蓮見さんは、自分はノンセクシャルである、とポツリと零した。


異性に恋愛感情を抱くことはあっても、性的欲求はなく、肉体が触れ合うことは望まない。


今までの経験の中で恋愛感情から、手を繋ぐ、ハグをする、キスをする等肉体的接触が生じた場合も、自分の気持ち次第なので相手にはとても申し訳ないが、ダメな時が大半で、だがたまには手をつないだり、抱きしめ合うくらいは平気な時もあると。


ただ基本的には肉体の接触はもちろん、一定距離以上のパーソナルスペースに踏み込まれると怒りを伴った嫌悪感しかないと。

それが学生時代の経験と、あの男により男性恐怖症と嫌悪へと増幅したのだ。


本当は抱きしめたいのに、そんな事をすれば、蓮見さんにとって俺は今まで嫌悪してきた男と同類になる。

いや、ビンタまでされて図々しく上がり込んでここにいる俺は、初対面からすでに印象は最低で最悪で迷惑極まりない存在だったのだろうけど・・・。


「蓮見さん・・・」


「・・・なに」


「顔出してもらえませんか?」


「・・・なんで?気持ち悪い・・・」


「俺、蓮見さんのこと好きです。」


「は・・・?え、バカなの??私、男嫌いなの。あんたも例外じゃないんだけど」


「だから、好きにならなくてもいいから、俺は蓮見さんを守りたいんです」


「・・・え・・・頭大丈夫?5日前に初対面で好きとか意味わからないんだけど」


「それでも、蓮見さんのことが可愛くて仕方ないんです。だから、俺に守らせて下さい。俺の事都合よく利用して下さい。」


「・・・」


蓮見さんはしばらく黙りこんでしまい、俺もその間黙って蓮見さんを待った。


もぞもぞとタオルケットから覗いたのは、目から上だけ。


「・・・男はみんなこの世から滅びればいいと思ってる。憎しみしかない。それと同じくらい、怖い・・・。

男っていう生き物を私は信用しない。」


眉間に皺を寄せ、大きな瞳の淵から、膨れて盛り上がった涙が堪え切れずに決壊して零れた。


「それでかまいません、俺が勝手に蓮見さんの側にいたくて守りたいんです」


敷かれたラグに膝を着き目線を蓮見さんに合わせ、手も握らず、一切触れずに言葉のみで伝えるしかないけれど。


「俺は蓮見さんに触れない。俺が蓮見さんを好きなのを利用してください。」


「・・・私は気持ちに答えられない」


「それでもかまいません。」



蓮見さんは再び顔までタオルケットを引き寄せて、体を震わせて泣いた。


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