第172話 過去のおはなし(8)
王都から派遣された騎士団は三日後に到着した。小隊程度の規模だが数にして30人以上はいる。
「え…っと状況は…?」
「それがですね小隊長。問題のドラゴンは既に…」
「そんなの見れば分かる!俺はこいつをどこの誰がどうやってこうしたのか聞きたいんだ!」
騎士団の多くは目の前の状況をよく理解できずにいた。
「…三日くらい放置されてたそうですよ。それで…こんな感じに…」
「まず…最初に聞きたいのはこの大穴…そして…何故あいつは体の半分が埋められ、生きている!?」
ギィヤァァァ!!!!!
ドラゴンは吠えながら、体を藻掻いている。大穴の中、そのドラゴンの体はそこらの土砂やら木々やらで体の半分を埋められ、動けない状態にあった。
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「そもそもどうやってこいつ殺すんだ?このままでいいわけ?」
私は作業を終わらせ、ベラドンナに聞く。私達は今、セコセコとその辺の様々な土砂やら岩石やら木々やら水やらを混ぜた物を運び、やっとドラゴンの半身(下から見て)が埋まった……
「どうやろう…」
「このまま放置でいいの?いつかは死ぬわけ?」
「さあ…」
「さあって…」
この生き埋めを提案したのはベラドンナである。よくもまあ残酷な方法を考えるなと思ったが、こういう図体の大きい魔物には元の体重も相まって有効的らしい。
「あんた魔王軍討伐隊のリーダーの時あったんでしょ?だったら少しくらいそういう関連の知識は持ってないわけ?」
「そ、そんなにきつく言われても…分からないものは分からない…」
ベラドンナは急に頼りなくなる。こいつ戦ってる時と戦ってない時のギャップの差が激しい。今にも泣きそうな感じでモジモジとしている。
「わ、私が知る限り魔物は食べたり、飲んだりしなくても大丈夫ってこととたくさん種類が存在することくらい…確かまだあったような…」
「それ一般常識な」
…考えてみればあのドラゴンも生きている存在の一つなのだ。
この世の理にはよく分からないものが存在し、その一つは魔法、そしてもう一つは魔物。
…少なくとも目の前のドラゴンが繁殖をするという噂を聞いたことがない。だが天寿を全うすればそれで終わりというわけではない。いなくなっても時が経てばどこから伴なく現れるのが魔物だ。
「…ほんと謎だよな、魔物って…」
「あー、でも私一つ聞いたことがあるんだけど。魔物って魔法の副産物みたいなことを聞いたことあるかな、魔法は魔力を使うことで具現化する、その魔力は未知のエネルギーで何にでもなれたりするとか」
「……いや知らんが?」
なんだそれ聞いたことない。魔物の成り立ちとかには興味こそあるもののそういう関連は魔法省に入らなければできないのだ。
そして私は魔法省が嫌いだ。だから諦めていたのだが…
「要は宇宙の法則なんだって」
「それを早く言え」
結論、何も分からないである。とは言えその一般常識から考えるに自然死は滅多にない…そもそも空気すら吸わない魔物はやはり何かしらの攻撃などで封じたり、倒したりするのが常識であるからだ。
「…魔法が効かないってことだし、よし!このまま放置しよう!」
「え…」
「よし、帰るぞ!疲れた!」
私は有無を言わさずそう言い放ち帰ろうとする。
「ちょっとこのままじゃ討伐したとは…ねぇ…待って!」
その後ドラゴンの叫びが幾度となく聞こえた。
-三日後-
「はい」
「いやはいじゃなくてですね…確かに騎士団の方々が無力化を確認したわけなんですけど…あれは討伐したとは」
「いやでも討伐できる状況作ったの私なんですけど」
私は受付嬢とやりとりをしていた。理由は単純、お金のためである。
「まあね、錬金術さえ使えればこんな仕事もやめてますし、億万長者になれるんですけども使えないなら正当に金稼ぐしかないじゃないですか、だから頼みますよ〜」
できるだけ丁寧にだが口調にやるせなさが出ている。だってめんどくさいから、とっとと金渡せば済む話だが。
あのドラゴンを討伐した時の報奨金は100万ゴールド。少しは出し渋りもしたくなるだろう。でも私は引かな…
「ねぇ、もうお金はいいじゃん。皆が無事でいたわけなんだしさ」
隣でベラドンナが横槍を入れてくる。こいつは知識やら魔法やらはあるものの世間というもののをイマイチ知らないようだ。
「その考えで世の中生きていけるなら平和でいいこと」
「で、でもぉ…」
その時だった。バン!と冒険者ギルドの扉が開かれ、ぞろぞろと銀の甲冑と鎧を纏った騎士団が入ってきた。
「あ…察し」
これは多分めんどくさいやつだ。どうせ私達が呼ばれる。
「…あのドラゴンを埋めた者は誰だ?」
隊長らしき男は低くそう言い放った。はい。
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