第103話 米軍VS異世界人(11)
「ほうほう。なーんか派手にやってんな」
発砲した時の光を見ながらヒカルは言う。
-アメリカ合衆国 バージニア州 リッチモンド-
コンクリート造りの低い建物が多いこの辺りでは隠れることは厳しそうだ。
そして兵士のほとんどが高速道路の方へと向かっている。そのためたやすく街の中へと侵入ができた。
「キルアって…馬鹿…だよな」
俺は躊躇いながらもダイレクトにそう言う。あいつ囮の意味だと分からなかったのか?
「俺が盗賊のお前が皆を相手に無双って格好良くねって言ったおかげ」
ヒカルの性格が出ている気がする。
「軍は…いないかな。この世界の人間は魔力感知できないからそこが厄介」
「私も感じられません」
そう言いながらも俺達は路地を通って逃げる。そして曲がり角を曲がろうとした時
「なっ!?何者だ!?」
重武装の兵士が二人、こちらを見るやいなや銃を向ける。
「ああまずい」
アナリスが言う「まずい」はヒカルが第一に路地を出たからだ。
ヒカルは魔法を使えないこの世界の人間。
「ま、待ってくれ。俺はただちょっと…」
「何!?ここの住人か?身分証明書はあるのか?」
「え?身分証明書か…」
ヒカルが咄嗟に気を効かせたのを路地裏越しに見る。ヒカルはポケットを探ったりとしているが表情を察するになさそうだ。
「…なんだ?ないのか?命令では見つけた人間は我々の観察化に入ることになっている。大体避難命令が出ていたはずだ」
(アナリス、なんとかあいつらどうにかできないの?)
(ちょっと待って!)
俺達は囁きながらそう言うとアナリスは路地から建物の上へと伝って行く。
「ホイッ!」
「ぬわあ!」
ガシャーン!
大きい音がしたと共に静かになる。どうやら壁か何かに叩きつけたらしい。
「マジ見つかったらどうすんだよ」
「そう怒らないでくれよガイム。収穫もあったんだし」
収穫?俺が疑問に思っているとヒカルは気絶している兵士が持っている銃を取り出す。
「M16自動小銃。装填数30発のアサルトライフル。1960年代製とは聞くけど今でも使われる程」
「はあ…?」
「60年前だよ。冷戦の時代」
この世界の歴史はさておき、どうやら強そうな銃を手にした。
「ほい、ガイム!」
「うわっ!?って…」
俺はもう一人の兵士が持っていた同じ銃を渡される。
「活躍が必要だろ?異世界なのに魔法が使えない人間なんてもったいない」
「…なんだよ」
俺は同じく投げられた弾倉を装填して、素早く右手親指セレクターレバーを操作する。
「おおっ…!銃の扱い知ってんだ」
「いや…なんとなくで」
何故だかは知らないがこうなのかと思った。俺には銃の才能があるかもしれない。
とは言えヘリコプターに勝てるとは思わないが。
「とにかくこの街を通ってどこか空港に行かないと」
ヒカルはそう言うと先へと進む。
警戒しながら足を進める中、カノンが話を切り出す。
「私今思ってるんですけど…仲良くできないんでしょうか?」
「?」
「私達と仲良くなればきっとうまく行くはずなんです…」
「ああ、なるほどね」
ヒカルが納得したかのように頷いた後、それを全否定でもするかの如く
「まあ無理だね。彼らからしたらニューヨークの件はまだ解決してないだろうからね。それに話し合いで全て解決できたらアメリカはロシアと中国とは対立しない。というか今もっと深くなってるし。ニューヨーク襲撃でアメリカも甘く見られた結果だよ」
「それは分かってます。私だって王女ですから国と国の仲を保つことは難しいことくらい」
「俺達が彼らからして何であるか分からない以上は…もう遅いな。既に彼らからしたら俺達も魔王達と変わらない」
そう言った時、上空を今までに見たことがない飛行機が通り過ぎる。
「…プレデター、グレイイーグル、グローバルホーク…じゃないな。リーパーか」
「そのリーパーってやばい?」
「たまにミサイルが詰んである」
多分俺が持っている銃は使い物にならなくなったことが分かった。
そのリーパーなる飛行機は高速道路へと向かって行ったため俺達の相手になることはなかったが。
「リッチモンド中心部でしたっけ?あのビルですよね?」
カノンがキルアとの待ちあわせ場所を言う。キルア自身も[印]の魔法を使ったらしいが、距離が離れると使い物にならなくなるらしい。
「リッチモンドの鉄道は止まってだろうな。だとしたら…ああ、もう分からん!」
ヒカルが珍しく頭を抱える。この先不安要素が増えることしかなさそうだ。
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