第101話 米軍VS異世界人(9)

上空を飛ぶヘリコプターを見ながら俺は森の中で様子を伺っていた。


「おおお…怖えぇ」


戦闘機はどこかへ飛び去って安心した束の間これである。俺は不幸体質かもしれない。


「ニュースでも話題だよ。ワシントンDCのハズレにある街で宇宙人か!?ってね」


「宇宙人…あながち間違いではないですけど…私達からしたらそれら類は神様のことを言いますし…」


「そうなんだ?てか俺は日本生まれの地球人なわけで…説明したらなんとかなるかな?」


「うん。多分無理だろうね」


「ですよね〜」


ヒカルはそう言うとドサッと腰を降ろす。街まではもう少し、なわけだが…


「1,2,3…まだいるよ見た限りだと」


「そうですか…」


キルアの超視力曰く、米軍の車両が街への道を封鎖しているらしい。


「強い攻撃であればあるほど魔力を喰う…って話したっけ?さっきの一斉攻撃であと6分の1しかないから私がいてもかなり突破はきついよ」


「重機関銃の弾幕を防いでもあと6分の1って…お前何なん?大体F-22の攻撃を防ぐってのも…あれこの世界最強とも名高いステルス戦闘機だぞ」


「とにかく、街へ出て…それからどうするのですか?」


「あっ、増えたぞ!今7台になったぞ!」


キルアが嫌なことばかりを伝える。そしてカノンが言う、街へと出た後…マジでどうすればいいんだ?


「この様子だと空港は多分無理だろうな。そもそも空港まで行けるかどうかも…」


「正面突破は無理だから…」


俺はそこで言葉を詰まらせる。つまり誰にも見つからずに、というわけらしい。キルアはまだしも俺にそんなことが…


「リッチモンドの避難住人にさり気なく混ざれないの?髪の色変えれる?」


「髪の色は魔法の象徴とかどうのこうの…要は変えれない。それならヒカルは?君日本人でしょ?」


アナリスが首を傾げてそう言うと


「どうだろね、あの街に俺以外の黒髪モンゴロイドがいるかどうか…」


「状況は芳しくないのですね…」


そうこうしているうちにまたヘリコプターが俺達の上空を通り過ぎ、街へと向かう。


「赤外線の心配はないけど、だからと言ってここにいたらいつかは見つかるでしょうね。キルア、警備が甘いところはないの?」


「ないよアナリス。どこも変な黒い道具を持ってて黄色の服着てるやつらしかいない。目になんか付けてるよ」


「米軍だらけってことか。そして夜間用の装備…連中はここで勝負どころと見てるな」


「私さあ!確か日本でも攫われたよね?その時とまるで状況が違うんだけど!どっちも平和な国かなあと思ったのに!」


アナリスがちょっとヒステリックになってそう言うと


「日本は憲法で平和主義を掲げてるからな。軍を持たないコスタリカにでも移住するか?でも最近は日本でも憲法改正案がどうのこうので…」


「へ、へぇ…」


カノンは内容を理解してなさそうな曖昧な返事をする。もちろん俺も分からん。


「こんなかに透明化の魔法を使える奴は〜?」


ヒカルが間の抜けた声でそう言うと


「あたし一人ならできるよ。あと触れた物」


「お前か、まあ盗賊だし持ってそうとは思ってたが、不安要素しかない…ちょっと待て、今触れた物って…」


ヒカルはそこでジッと何かを考えると


「キルア、それってお前に触れてる人も透明化できる?」


「え?やったことあるけど物しか無理。魔物でも駄目だったし」


「なるほど。俺らがあの山でどう脱出するかを考えた時間が無駄じゃなくて助かったよ。もし人も透明化できるとかならマジギレしてたけどね」


キルアはあの時、何か大事なことを言った覚えがない。一回コイツラが使える魔法を教えてもらったほうがいいな。


「でもまあ作戦事態は…浮かび上がった。キルアとカノンは魔力に余裕あるっしょ?」


ヒカルはそう言うとスタっと立ち上がった。






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