第94話 米軍VS異世界人(2)
木々の中を抜けて走り続けて10分位だろうか。肺がとにかく痛い。
「こ、ここまでならと、とりあえずは」
ヒカルは息も絶え絶えに言う。
「はあ…はあ…な、なんなんですか?あれは…」
カノンも息絶え絶えに言う。
「俺達を過去に襲った奴…いや分からない。米軍が…はあ」
「あ、あんなのじゃなかった。俺が見たのは真っ黒」
「そう。ガイムの言うとおり。もしかしたら謎の組織は米軍と繋がりがあるのかもな…疲れた」
「お前ら大丈夫か?」
結構平気そうなキルアが言う。
「ここまで来ればいいと思う」
アナリスが木に手を当てながらそう言ってきた。
がそれを覆すかのように上空をブラックホークが飛んで行く。
「まずい…[透明化]!こっちに来て。私に触れたら透明化するから」
アナリスが全員を近くに集める。ブラックホークは真上を飛んで、飛び過ぎて行く。
「逃げ場はないのかもな」
ヒカルは冷静にそう言う。
「あの…触らないでくれるかな?」
「あ、悪いな。何わざとじゃないからさ」
アナリスに言われヒカルはそんな悪気もなく手を離す。多分胸あたりに手を当てたんだと思う。
ババババというヘリの音が遠くから聞こえる。それが俺達に不安を与える。
「とりあえず状況整理な。まず米軍は俺達を捕える、殺す為にここまで来させたと見ていい。どこまでが軍のシナリオ道理までかは分からないけど少なくとも見つかったら終わり」
「私の魔法でどうにかできるっちゃできるけど正面からはきついかな。機銃が厄介」
「見た感じ敵はブラックホークとハンヴィーやJLTVとかの輸送ヘリや輸送車がほとんどだから最悪正面からでもカノンとキルアが入れば大丈夫でしょ」
俺が入っていないのだがそれは如何に…
とそこにまたヘリコプターのババババという羽音がする。木々の間から見えるそれは明らかにゴツそうな見た目をしていて、今までとは違う。
「……アパッチロングボウ、対戦車ヘリコプターまで投入するのか」
「なんかあれ強そうだよ」
「強いどころじゃないよキルア。世界最強とも言われるヘリコプターの一種だ」
「世界最強って普段ならわくわくするんたけど今回は命が惜しいかな、私も」
「あれが…私達に…これは本当なんですか…」
俺達はそこから動くことができなかった。
____________________
「ヘリ部隊捜索開始。隊列完了」
「ロングボウ、待機地点からの飛行を許可」
「ノーフォーク海軍基地より応援が到着。APCの到着予定はあと15分」
「ハンヴィー及びJLTV部隊は周辺道路を確保。封鎖しろ」
「倒木を回収後に高速道路の開通を行う。送れ」
「衛星映像に問題なし。赤外線による捜索開始」
「ふむ、順調だな」
フォードは通信のやりとりを見てそう呟く。隣ではシャーロットがスマホを耳に当てている。
「えぇ、では。大丈夫よ。米軍が完全に退路を遮断した。あの山からは絶対に出られない。さらなる応援も来るそうよ」
「君のおかげで本部とのやりとりがスムーズにできた。感謝するよ」
「米軍との繋がりはFBIともあるからよ。あと彼らは例のレーダーとの関係性はあるの?」
「いや、おそらくないだろうな。同じ異常存在という点は共通だが、彼らが空に羽ばたかないのを見るとどうもまた別のやつだ」
「故障とか誤作動とかの可能性はかなり低いわね。これはイギリス海軍だけの件じゃなくてノルウェー海軍も発見したとなると」
「アバディーンの件も彼らではないらしいが…私の目的は[人間]を捕まえることだ」
「トーマスはそうだろうけど私は化け物の相手よ。FBIの捜査網じゃ手に負えなくなるかもだってのに。それより…」
シャーロットは話を戻して
「その[人間]を捕まえる為に空港を3つ塞ぐというのはあちらも相当苦難したらしいわ。最も米軍に協力を頼むだなんて最高機密機関とは一体何なのかしらね」
「奴らの顔は分かっているからな。もうなりふり言ってはいられない。CTSAという名前でも結構だ」
「あらそう。それより退路を塞いだとは言え、日本では拘束状態からでも逃げ出したんでしょ」
「問題はない。何故ならば」
フォードは一息間を置き、悪魔のような顔をして
「今度は躊躇はしない。本部からも奴らの息の根を止める許可を頂いた。そうだ、何も生きたままの解剖は必要ないからな」
「トーマス、あなた顔が怖いわよ」
「当然だろエレナ。奴らも人間の、しかも子供だとは聞くが、これも祖国、人類の為だと思えば良いこと」
上空をAH-64D アパッチロングボウが5機通過した。
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