第32話 ヒーロー・メカ

202X年 6月14日 午後1時00分頃 


TVのニュースでアナウンサーの声が流れている。


「首都直下型大震災のニュースの途中ですが、驚くべき情報が入って来ました。今回の震災は、某国の組織が秘密裏に開発した新型爆弾によって人為的に起された物であると言う・・・」


 大震災に襲われた首都圏。そこでは私達と機械化部隊による懸命の救助作業が行われていた。


 壊れた建物の下敷きになった人々を、非武装のオートマトンが助け出している。


 空からは、同じく武装解除して救援物資を運ぶフライングマトンの姿も。


 私とツヴァイも、その機動性を生かして給水車や、救援隊のトラックを腕のマニュピレーターで、そのまま運んでいる。


 各地に設置された救援センターには、治安を守る為に非殺傷兵器を持ったグランドマトンが配備されている。


 ゲッヘラーの基地だった建物も、内閣府から震災救護基点に指定され、ケガ人の手当や介護に奔走するキラやジェイドの姿もある。

 

 そこに帰投してくる私とツヴァイ。

 

「我問さん、城東地域の給水車配置は完了しました。次は何を運べば良いですか?」

 

「ご苦労様です、奈々さん。取り敢えずちょっと休憩して下さい」

 

「そんな! こうしている間にもまだ沢山の人々が!!」

 

「奈々さん、どうかそう焦らないで下さい。ツヴァイだってまだ試作段階なんです。こんなに長時間稼働させた事は無いので、念の為に点検しないと!」

 

「でも・・・」

 

「奈々さん、ゲッヘラーに言われた事は気にしないで下さい。この災害は決してあなたのせいではないのですよ」

 

「そう思いたいけど・・・」

 

「現にあなたがゲッヘラーを倒してくれたおかげで、オートマトン達をプログラムし直せて救援活動に当たらせる事が出来たんです。さあ、ツヴァイをドックに入れて下さい」


「分かりました・・・」

 

 私は専用のドックにツヴァイを収納する。

 

 ドックからはマニュピレーターや計測機器が出て来て、ツヴァイのメンテナンス・ハッチを開き、点検、保守作業に入る。

 

 ドックから本部へ向かう途中の避難施設で、私は小野寺明日香と、その弟さんである勇二君に出会った。

 

「明日香! 無事だったのね、弟さんの勇二君も?」

 

「奈々!? あなたこそ! ・・・でも、その格好は、どうしたの?」

 

明日香の弟、勇二がツヴァイの耐圧ジャケットを身にまとった私を指差し、

 

「あ! それはエグゼターのパイロットスーツ!」

 

 いきなり図星を指されて、戸惑った私は、

 

「勇二君、どうして知ってるの?」

 

「だって、テレビでやってたよ。この震災の救世主だって!」

 

「勇二、それって。奈々、あなたは一体?」

 

「明日香、詳しい事は、また今度話すけど・・・。勇二君の言う通り、私は飛行ロボット、エグゼターのパイロットなの」

 

「アスカ姉ちゃんの友達が、エグゼターを操縦してるなんてスゴイや! ねぇ、今度、僕もエグゼターに乗せて欲しいな!」

 

「こら、勇二! 無理なお願いをしちゃダメよ!」

 

「ゴメンね、勇二君。エグゼターは、特別に選ばれた人にしか操縦出来ないのよ」

 

「じゃあ、どうやったら僕は、その「特別に選ばれた人」になれるの?」

 

 この純朴な少年のストレートな質問には、さすがの私も面食らって、

 

「そ、それは・・・、 今は無理だけど、キミがオトナになる頃には・・・」

 

「本当? 僕はエグゼターに乗って、世界中の困っている人達を助けたいんだ!」

 

「勇二・・・、ゴメンね、奈々。勇二が無理な事を言って」

 

「いいのよ、明日香。ところで、明日香のご家族はご無事なの?」

 

「それが、地震で崩れた家に閉じ込められている時に、急に大水が入って来て、

私は勇二を抱きかかえながら洪水で流されている所を、偶然に救援無人ロボットに助けられて、ここで避難生活を送っているんだけど..、両親達の消息はまだ・・・」

 

 どうやら、明日香達は、フライングマトンに搭載された、元々は敵の生体反応やエンジンの熱源を探知する為に搭載されている、超高感度の赤外線カメラに発見され、救助されたらしい。

 

「そう、ごめんなさい」

 

「なにを言ってるんだよ、アスカねえさん! 父さんや母さんだって、きっとロボット達に助けられてるよ! ね? 奈々さん??」

 

「そ・・・、そうね、だから二人とも、安心して。きっとすぐに「ご両親がご無事だ」って言う知らせが入るから、待っていてね」

 

「ありがとう・・・、奈々」

 

「明日香、私はこの救援センターの中央司令室から連絡が取れるから、何か困った事があったらいつでも連絡してね」

 

「うん、分かった。本当に、本当にありがとう、奈々」

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