第244話 激戦

「弾け飛べ!」


 アスカさんの風の魔法が炸裂する。


「グワオオオッ!」


 襲って来たメスのホーンベアーが吹っ飛ぶ。だがまだ致命傷ではない。ヨロヨロと立ち上がろうとする。


「グワオオオッ!」


 その時、ラウムさんと対峙していたオスのホーンベアーの方が、メスを庇うようにアスカさんの前に踊り出た。


「アスカ、済まん! 取り逃がした!」


 ラウムさんが慌てて駆け付ける。


「大丈夫です! 燃え尽きろ!」


 アスカさんが今度は火の魔法でオスのホーンベアーを攻撃する。


「グワオオオッ!」


 火球を浴びたオスのホーンベアーが苦し気に呻く。だがこちらも致命傷ではない。


「コイツら、頑丈さが半端ないぞ!」


「魔法防御力も高いです! 厄介な相手ですね!」


 どうやら魔法と物理両方の防御力が高い魔物らしい。お二人が苦戦している。私も加勢に入ろうとした時だった。


「クエッ! クエッ!」


 上空のステラさんが鋭く二回鳴いた。まさかこんな時に新手!? 私は身構えた。すると間も無く、


「プギャアアアッ!」


 そんな鳴き声を響かせながら姿を現したのは、牛ほどの大きさがある猪の魔物ブラッディボアだった。真っ赤な瞳をギラギラさせて、鋭く飛び出た牙を光らせながら猪突猛進よろしく襲い掛かって来る。


「チッ! こんな時にまた厄介なヤツが...」


「マズいですね...」


「猪は私が相手します! お二人はそのまま熊の相手を!」


 そう言うなり、私はブラッディボアの前に踊り出た。


「おらぁ! こっちだ! こんのブタ野郎!」


「プギヤアアアッ!」


 安い挑発にまんまと引っ掛かったブラッディボアは、私に向かって突進して来た。激突する寸前、私はヒョイッと躱して亜空間に潜り込んだ。


 目標を失ったブラッディボアが踏鞴を踏む。私は直ぐ様ブラッディボアの真上に移動し、首の後ろの急所に破邪の剣を突き立てる。


「グッ! か、硬い...」


 どうやらこのブラッディボアも物理防御力がかなり高いらしい。私の力では中々剣が刺さっていかない。


「プギヤアアアッ!」


 ブラッディボアは半狂乱になって暴れる。どこから攻撃されているか分からないからだろう。


 私は再度、同じ場所に慎重に狙いを付けて剣を突き立てる、今度は半分くらい剣が刺さった。ブラッディボアはますます激しく暴れる。


「これでトドメ!」


 三度目の攻撃でようやくブラッディボアが沈黙した。


「ハァッ...ハァッ...やった...」


 私は息を切らしながら、ホーンベアー二頭と戦っているラウムさんとアスカさんの方に目を向ける。


 あっちはまだ戦ってるようだ。私は加勢するべく現場に急いだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る