第242話 女子脳

「まぁ、あくまでも噂なんですけどね」


「そうそう。そんな簡単にクーデターなんか起こらないですよね」


 すいません、クーデター起こりました。まぁ未遂で終わったんですが。というか、私がクーデターを未然で防いだ張本人なんですが。


 守秘義務があるので言う訳にはいかないけどね。


「隣国と言えばカリナさんの遠距離恋愛のお相手がいらっしゃる国ですよね~♪」


「セリカさん! またその話ですか! いい加減にして下さいよね! そんなんじゃ無いって言ったじゃないですか!」


「あんれぇ~? 違うんですかぁ~?」


 くっ! 分かっててやってんな! そのシタリ顔がムカつく!


「なんですかその話!? 詳しく聞きたいです!」


「私も私も! 是非とも詳しく!」


「アスカさん、目を輝かして言うのは止めて下さい。どこの乙女ですか? ステラさん、いつの間に降りて来たんですか? 素っ裸で迫って来るの止めて下さい。どこの痴女ですか?」


 全くもう! コイバナは女子の大好物だって言うけど、本当にみんなガシガシ来るんだな! ナタリアさんとヒルダさんもニヤニヤしてるし!


 唯一興味の無さそうなラウムさんだけが困惑顔している。


「ほらほら! まだ仕事中ですよ! 皆さん、さっさと持ち場に戻って下さい!」


 私はリーダー権限を振り翳して強引に話を切り上げた。すっかり女子脳が全開になった人達は不満そうだ。だが私としても守秘義務があるので、これ以上詳しく喋る訳にはいかない。それとセリカさんは後で説教だ!



◇◇◇



 さすがにその後は何事もなく日が暮れた。今日中に領都には着けなかったが、明日の午前中には着けるだろう。


 野営の準備をしていると、女子脳連中がソワソワしながら私を見て来るのが分かったので、疲れてるからと言って早々に床に就いた。


 女子脳連中が残念そうな顔してるが知ったこっちゃない。ただその日の夜は久し振りにアクセル様の夢を見た。


 元気でやっているのかな? ちょっとだけセンチな気分になったりした。



◇◇◇



 そして次の日、何事も無ければそろそろ領都に着くだろうという所まで来て、


「敵襲だ」


 三度馬車が止まった。


「今度はどうやら魔物のようだな」


 ラウムさんが空を仰ぎながらそう言った。ちなみにステラさんとは簡単な合図を決めてあるから分かるのだ。


「クエッ!」


 と一回だけ鳴いたら人間、つまり盗賊が出たぞ。


「クエッ! クエッ!」


 と二回鳴いたら魔物が出たぞ。


 こんな感じだ。どうやら今回は二回鳴いたらしい。つまりこの先で魔物が待ち構えているということだ。


 私達はいつものように布陣して敵襲に備えた。

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