第203話 ちょっとした贅沢
ギルドの受付嬢さんに間違いない旨を伝えてから銀行に向かった。
「はい、ステラさん。確認して下さいね?」
「確かに。ありがとうございます」
ステラさんは今日の山分け分とこの間の山分け分含め、全ての金貨袋を銀行の受付に出した。受付嬢さんが目を丸くする。
銀行を出た私達は馬車乗り場に向かった。
「じゃあ早速温泉に向かいましょうか」
「はい!」
「カリナさん、パンフレットを見せて貰っていいですか?」
セリカさんがそう言って来た。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます...え~と、この場所だと...5番の馬車乗り場ですね」
「いやいや、せっかくお金有るんだから馬車をチャーターしましょうよ?」
「えぇっ!?」
「ま、マジですか!?」
なにをビックリしてるんだろう? このくらい贅沢の内にも入らないだろうに。私は乗り合い馬車の事務所に向かってスタスタと歩き出した。
「すいませ~ん! 馬車をチャーターしたいんですが?」
「いらっしゃいませ! 何人様でしょうか?」
受付のお兄さん? おじさん? が応対してくれた。
「三人になります」
「でしたら四人乗りの馬車でよろしいでしょうか?」
「はい、それで構いません」
「何日くらいご利用でしょうか?」
「そうですね...取り敢えず一週間でお願いします」
行きと帰りで二日程度掛かるからね。余裕を持ってこんなもんでいいでしょ。
「畏まりました。お値段はこちらになります。延滞料金は一日経過する毎にこれだけ発生しますのでご注意下さい。それと御者は要りますか?」
「御者は必要ありません」
私は料金を支払いながらそう言った。
「確かに受領致しました。それと馬の世話は料金外になります。そちらで負担して頂けますようお願い致します。こちらが貸し出し札になりますのでお持ち下さい。返却の際、受付にお渡し下さい。くれぐれも失くさないようにお願い致します」
「分かりました。ありがとうございます」
「ではこちらにどうぞ。馬車までご案内致します」
そう言って受付さんは私達を裏手に案内した。
「こちらがお貸しする馬車になります。馬はまだ若くて活きがいいのでご安心下さい」
確かに馬は毛並みが美しく健康そうだ。
「ありがとうございます。ではお借りします」
「お気を付けて。いってらっしゃいまし」
私は御者席に乗った。
「じゃあ行きましょうか。乗って下さい」
なんだかまだボーッとした様子のお二人に声を掛ける。
「ハッ!? か、カリナさん、せ、せめて私が御者をやりますよ!」
「わ、私だってやりますよ!」
「いえいえ、お気持ちだけで十分ですよ。私が好きでやってるんで気にしないで下さいな?」
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