第23話 ターゲットロックオン
「彼女はカリナ。俺の専属護衛を務めてくれる」
「アクセル様の専属?」
そう言ってミネルバは、私の頭の天辺から足の爪先まで絡み付くような視線を送って来る。とても気持ち悪い...やがてその視線は私の胸部に固定された。そして何故か嫌らしく嗤った。
「そうなのですねぇ~♪ ミネルバ、ちっとも知りませんでしたぁ~♪ アクセル様ったらいつの間に女性を採用されたんですかぁ~?」
そう言って今度は、自分の胸をアクセル様に押し付けるようにして腕に絡み付く。なるほど。女としてマウントを取りたかった訳か。自分の胸の大きさを強調するような、胸元が大きく開いたドレスを着ているのもこのためだろう。どこまでも浅はかな女である。
その絡み付いた腕をやんわりと外しながらアクセル様は、
「君に言う必要は無いだろう」
と冷たく言い放った。
「でもでも~♪ その方、ちっとも強そうに見えませんわぁ~♪ 護衛をお探しでしたら、言って下されば我が公爵家がご用意致しましたのにぃ~♪」
「悪いがこの件に関して君と議論するつもりは無い。それで何の用かな? 俺の記憶が正しければ、今は王子妃教育の時間のはずだが?」
「それなんですけどぉ~♪ 講師の方が意地悪でぇ~♪ ミネルバを虐めるんですよぉ~♪ アクセル様から講師を代えるように言って下さいませんかぁ~? もうミネルバ辛くってぇ~!」
そう言って今度は明らかな泣き真似を始めた。だって一滴も涙溢して無いもん。
「悪いが俺にその権限は無い。訴えるなら教育を担当している私の母上に言うんだな」
「そ、それは...」
ここで初めてミネルバが口ごもった。それも当然か。アクセル様のお母上って言ったら王妃様だもんね。
「用はそれだけか? だったら、悪いが忙しいんで帰って貰えないか?」
「分かりましたぁ...」
そう言ってしおらしく帰ろうとするミネルバだが、最後に私のことを鬼のような顔で睨み付けてから部屋を出て行った。これはアレだな.. ターゲットロックオンされたかも知れないな...
「ふぅ...疲れた...カリナ、嫌な思いをさせて済まんな」
「あ、いえ、私は別に...」
「どう思った? 正直に聞かせて欲しい」
「そうですね...その前に、彼女は何歳なんですか?」
「15歳。俺と同い年だ」
15歳であれはちょっと...いくらなんでもあざと過ぎるだろう。語尾を甘ったるく伸ばす所とか、自分で自分のことをミネルバと呼ぶ所とか。私の歳でもアウトだろう。幼女じゃないんだから。
それにしても、アクセル様の年齢を初めて聞いたけど、やっぱりイアン様と同い年だったんだね。そのくらいじゃないかと思ってたよ。
「そうですか。それにしてはちょっと...奔放過ぎると言いますか...」
「ハッキリ言っていい。ガキっぽいってな」
アクセル様、容赦無いね。でもあれ、多分に演技が入っていると思うよ?
「ま、まぁそれは...」
「ま、取り敢えず嫌な女のことは忘れて、部屋で少し寛いでくれ。侍女に君の部屋へ案内させるから。今日の夕食は一緒に食べよう」
「よろしいのですか?」
「構わん。君の就任祝いも兼ねているから」
「分かりました」
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