第21話 ショコタン

 途中、自販機で缶コーヒーを買い、スタジオに戻るとアランの席には作画監督のショコタンが座っていた。



 僕が近づくとショコタンは顔を上げ、こっちへ視線を向け微笑んだ。


 彼女も若そうに見えて、すでに三十代半ばのはずだ。

 

 しかし無邪気に微笑むと、ヤケに可愛らしい。



「もうあの子、帰ったの?」

 ショコタンは、パラパラとアランの描いた動画を見ている。



「ええェ……、まァ、一応、未成年なので」

 缶コーヒーを飲んだ。これを飲んだら、本気で動画に取り掛からないと。

 朝イチまで終わらないだろう。



「あァ、そうか。あの子。

 まだ未成年なのォ。どうりで若いわねェ。

 お肌もピチピチ。

 ああァ……、羨ましいわァ✨🤗✨」



「フフ、そうですね……」

 なんと応えたものか、苦笑した。


 『まだまだショコタンも若いですよ✨』と応えた方が良いのだろうか。



「ポーが手伝ったの。これェ……?」

 またショコタンはパラパラと動画チェックをした。



「いえ、全然、残りは僕がやりますから」

 軽く首を横に振り肩を竦めた。



 仕事を受けた手前、途中でっぽり出すワケにはいかない。

 最初からフルスロットルで取り組まないと朝イチでは終わらないかもしれない。

 もし終わらなければ、デスクの下野に怒られるだろう。怒られて済む問題ではないが。



「残りッて、出来てるじゃン」

 ショコタンは肩をすくめた。


「え、出来てるッてェ……?

 何がですか」


「動画よ。もう完璧じゃン」

 僕に動画を見てみろと、こっちへ寄越した。



「え、まさか。だって僕は何も手伝ってないんですよ。そんなはずは……。ちょっと」

 僕は急いでショコタンから動画を手渡して貰い、自分の目でチェックした。



「……」パラパラと動画を見ていく。


 スムーズに動画が動いている。

 最後までキレイに。


「アレェ……?」そんなはずはない。

 僕は夢でも見ているのだろうか。

 ゴシゴシと瞼を擦った。


 もう一度、タイムシートを確認し動画のチェックをした。


「出来てるでしょ」ショコタンが微笑んだ。


「ううゥ……」何かの間違いだろう。

 もう一度、パラパラと確認した。



「こッ、こんなバカな……」

 だが何度、確認しても同じだ。

 やっぱり完成していた。







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