【詩】熱と町

「発熱の方はブザーを押してください」

 敷居は跨げぬこの身を支えて

 待ち時間に空を見上げた


 通りの上だけひらけた空には

 鳥がいっぴき自由に飛ぶ


 隙間なく立ち並ぶビルがすべてなくなって

 全方位の空を眺められたなら

 きっとそれは美しいだろう


 隙間なく立ち並ぶビルがすべてなくなって

 全方位の空を眺められたなら

 そのうち飽きて家を建てる 影を求めて


 雑多な世界は機能的にできている

「お待たせしました」

 小さなビニール袋を片手に

 機能的な世界へと帰っていく


2021.05.14

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