客車ドア
旧型客車(オハ35とか)のドアには、色々な種類があった。
ホームから乗り込む時の最初のドアのことですぜ。
もちろん手動で、閉めるとノッチがかかるが、妻板の内側に金具があり、そこに引っかけて、開状態でも固定することができる。
古い写真を見ると、このドアは最初は木製で、のちに鉄製のものに交換されていったようだが、国鉄末期でも木製ドアはまだ多く残っていた。
戦前製のオハ35などはともかく、戦後生まれのスハ43やオハ61には、始めから鉄製のドアが付いた。
古い図面や写真を見ると、ナハ10系には奇妙な折り戸がついているが、現実に見た記憶はない。
ナハ11が登場する頃には、折り戸ではない普通のドアが標準になっていたのかもしれない。
ナハ10とナハ11の違いは、
「室内灯が白熱灯であるか蛍光灯であるかの違い」
と習ってきたが、照明器具の差だけでなぜ形式まで分けなくてはならなかったのか、いまだに解せない。
オユ10と11、オユ12と13も同じ関係だそうだが、私の知る限り、照明器具の違いで形式を分けた車両は他にない。
オハ35のドアで曲者なのは、新旧2代あるうちの古いほうの木ドアで、客車の外観を真横から眺めた時、これは非常に美しく気持ちがよろしい。
まず1000ミリ幅の窓がずらりと並び、右から左まで、ドア窓まで含め、ガラス高さが一直線にそろうのだ。
ところが乗客の立場になると、話は変わる。
デッキに立ち、今いる駅の駅名票を、ドアを閉じたままで読もうとする。
だが無理なのだ。ドア窓の高さが低すぎ、相当にかがまないと景色が確認できないときた。
2代目の木ドア(新)は、この窓が少し高くなり、外を見るのは楽になったが、窓の高さがそろう外観の美しさは失われた。
さらにその後の鉄ドアたちも、もちろん窓は高い位置に設けられた。
国鉄車両にも、機能よりも外観を優先した時代があったということで…。
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