第52話「性別」




学校が始まってからも、僕はずっと悩んでいた。

龍馬さんの事、姉さんの事、晶の事、そして、自分の事。


「明人、なんか元気無いね。」

「……パラ。」


パラには何もかも見透かされる。

いつも一緒に居るようになった、大切な友達。


「……色々、悩んでて。」


ずっと色んな事を考えている、と伝えると、誰もいなくなった教室の中、オレンジ色に染まる僕の机へパラが腰かけた。


「能力の事?」

「違う…それ以外の、話。」

「……何?」


と言いながら僕の前髪を耳にかけ、顔を覗き込むパラ。


……

「重い話だけど聞いてくれる?」

「聞くよ。」

「…自分の性別、色々、悩んでて。」

「あー、重くてデリケートな話。」

「……。」

「聞くよ、教えて。」


パラの綺麗な目にじっと見つめられると…なんか、心の奥まで見透かされたような…そんな感覚に陥る。


「……昔、色んな事があったんだ…それで、男でいるの…嫌かもって思って。」

「…何があったか、話せる?」

「……池崎明人って検索したら出てくる。」

「…検索しても…いい?」

「いいよ。」





「…明人、先生に…心まで乱暴されたの?」


「……された。」


「……名前、全部出てるね。」


「……出てる。」


「…これが、原因?」


「記事の、コメント読んで。」


「…読めない。」


「…漢字読めない?」


「読みたくない。」


「……読んで。」


「分かった……『大袈裟』」


「…頭おかしいだろこんなん書いた奴。」


「うん、おかしい。」


「……死にたくなった。」


「…これはこの記事が悪い…細かく書くのもダメだけど…明人が誘惑したって書いてある。」


「……してない。」


「うん…見て、この記事は正確だし明人の事守ってる。」


「……コメント読んで。」


「…全部の記事読んだんだね…でも…明人を批判してる人が居る…けど、それを怒ってる人もいっぱい居るよ。」


「…その守るコメント、投稿されたのいつ?」


「……半年前。」


「批判してるコメントは?」


「……三年前。」


「二年半、二年半もこのコメントに怒る人間が居なかったんだぞ。」


「……うん。」


「……なあパラ。」


「……うん。」


「僕が、女の子だったら…みんな守ってくれたのかな。」


「………明人…ぼ……僕ね……。」


「……。」


「……こ…この、コメント、酷いなって思うよ?それは明人が友達じゃなくても思っただろうなって…思うよ?」


「……ありがとう。」


「…明人、もうすぐ、能力が……開花するよ。」


「…………唯一の良い出来事だな。」


「でも、僕はそれが正しいとは思えない。」


「…………。」


「……家族に、相談するのも一つの手だと思う、でも、家族じゃなくても…カウンセラーだったり友達だったり…頼れる人には頼った方がいい。」


「……ありがと、一回行ってみるよ。」


「うん…明人の事、大切に思ってるから、それは分かってね。」


「……さすが親友。」


「でしょ。」




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