第110話 ワンマンライブ当日

 いよいよWhiteのワンマンライブの当日となった。


 偽物の俺の件だが、佐々木が上手いこと片付けてくれるという事で話はまとめてある。


 ネットで先行して発売したチケットの売り上げは上々だった。


「あとは当日券がどれだけ売れてくれるかだな」


 そんな事を思いながら、俺は今日のライブ会場へと向かう。



 ライブの開演時間からは少し早い時間に会場に到着した。


 今日の会場はいつもよりキャパも多く設定している。

テレビ局のプロデューサーや出版社の編集者なども見にくる事になっている。


「失敗は出来ないな」


 俺はこのライブが無事に成功したら、Whiteを新しいステージに導こうと考えている。


 その為にも今日のライブは何としても成功させなければいけない。


「おはようございます」


 会場内に入ると今日のスタッフや関係者に挨拶をする。


「今日はよろしくお願い致します」


 開演の1時間程前になるとWhiteのメンバーが到着した。

会場の準備は完全に整っている。


「おはよう。今日は頑張ろうな」


 俺はメンバーに声をかける。


「は、はい! 頑張ります!」

「緊張してる?」

「そうですね。緊張はしてます」


 莉奈が苦笑いを浮かべながら言った。


「まぁ、緊張する事は悪い事じゃないよ。でも、いつも通りやれば絶対に大丈夫だから」

「ありがとうございます!」


 莉奈はそう言うといつもの笑顔を取り戻した。


「その調子だよ」

「じゃあ、私たちはビラ配りに行って来ます!」

「了解! 時間には気をつけてね」

「分かりました!」


 莉奈たちは今日のライブのビラの束を手にして、会場の外へと出て行く。

その間に俺は会場の最終チェックをする。


「うん、大丈夫そうだな」


 開場時間となると、事前にチケットを購入していたファンの人たちが入ってくる。


 今回のキャパはいつもより多い。

それでも、半分以上は埋まっている。


「頑張ってきたもんな」


 しかし、立ち止まってはいけない。

向上心を無くした者はアイドルとしては死を意味する。


 常に向上心を持ち、謙虚である事が大切なのだ。


「四宮くん、君ってヤツは凄いな」


 そこには望月社長が立っていた。


「やっぱり、Whiteを君に任せたのは正解だったな」

「ありがとうございます」

「Whiteをここまで引き上げたのはもちろん彼女たちの努力もあるが、紛れもなく四宮くんが背中を押したからだ」

「まだまだこれからですよ」

「おっと、そうだったな。じゃあ、頑張ってな」


 そう言って望月社長はその場を離れた。


 開演の時間が近づくと、更にお客さんが入って来る。

気づけば8割程埋まっている状況が出来上がっていた。


「これだけ入れば上出来だな」


 関係者席の方を見ると、談冬社、集央出版、セントラルテレビを始めとする業界ではそれなりに有名な顔ぶれが座っている。


「俺も頑張らなきゃな」


 そして、いよいよ開演の時間となった。


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