第108話 偽四宮
翌日から、また日常が戻ってくる。
Whiteの知名度は地下アイドル界隈では爆発的に広がっていた。
もちろん、プロデューをしている俺の名前も徐々に世間に知られるようになった。
以前は、あまり表には出ないようにしていたのだが、最近はそのスタンスは変えて行っている。
やはり、時代に合わせて自分も変化していく必要があるだろう。
「四宮くんちょっといいか?」
俺は望月社長に呼ばれた。
「はい、大丈夫ですけど、どうかされましたか?」
社長室で俺は望月さんと対面する形を取る。
「一つ確認なんだが、君は合コンとか行くのか?」
「はい? なんの事ですか? 大学の時はありましたけど辞めてからは無いですよ」
俺は仕事ばかりしていて、そういった浮ついたことは一切と言っていいほどにしていない。
「まあ、そうだよな。そうだと思ったんだが……」
望月社長はなんだか歯切れの悪い言い方をする。
「何かあったんですか?」
「最近、君が夜な夜な遊び歩いているという噂が出回っていてな。私は君を近くでみているからこそ、そんなことは無いと言い切れるんだが」
この業界、足の引っ張り合いのようなところもある。
俺の場合、なまじ顔が広い上にメディアにも露出している。
嫉妬の対象には十分になり得るということだろう。
「噂だけなら、そのうち収まるんじゃ無いですかね」
人の噂も75 日という。
そんな長いこと出回ることでも無いだろう。
「それが、実際に居るみたいなんだ。遊び歩いている四宮くんが」
「それは、俺の名前を騙っている人物が居るということですか?」
「おそらくはそういうことになるだろうな」
「そういうことなら、放ってはおけませんね」
噂だけならまだしも、実際に俺の名前を騙って悪さをするのは許せることではない。
こちらとしても、立場というものが存在する。
Whiteが順調に成長してきたこのタイミングというのはまた狙ってきたかのようなタイミングである。
俺だけならまだしも、事務所にもWhiteにも迷惑をかけてしまうことになりかねない。
「分かりました。こちらで調べて対応します」
「ああ、早めに頼むぞ」
人脈があるとはいえ、この世の全ての人と友好関係を結んでいるというわけではないし、そんなことは到底無理な話である。
それだけ、変なところから恨みを買う可能性も高くなるというわけだ。
「四宮くんのような人間でも恨みを買うようなことがあるのだな」
「人脈というのは、こういう危険性も持ち合わせているということですね」
「気をつけてくれよ」
「ありがとうございます。ちょっと探ってみます」
そう言うと、俺は社長室を後にした。
「さて、やりますか」
大体の検討はついているし、こういうことには強い人物に心当たりがあった。
【あとがき】
お読み頂きありがとうございます。
諸事情により、前回投稿した最新話を削除させて頂きました。
改めて書いた最新話をお楽しみ頂ければ幸いです。
ご心配とご迷惑をおかけし、申し訳ございませんでした。
引き続きよろしくお願い致します。
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