第105話 最終選考

 まもなく、最終選考の開始時間となった。

最終選考にも実技審査が含まれてくる。


 早速、一人目が入ってきた。


「まずはお名前を教えてもらえますか?」

「はい。清川奈美と申します」

「ありがとうござます。おかけください」


 俺は書類を確認しながら言った。


「はい。失礼いたします」


 奈美はそう言うと、椅子に腰を下ろす。

そこからは2次選考では聞けなかった内容を質問していく。


「では、最後に実技審査になりますので、準備をお願いします」

「分かりました」


 俺がそう言うと、奈美は準備を始めていく。

奈美の特技は歌と書かれている。


 歌唱での勝負をかけてくるのだろう。


 奈美の歌は確かに上手かった。

それだけ練習しているのだろう。


 アイドルとしての素質は兼ね備えているのではないか。

少なくとも俺はそう感じた。


「さすが、四宮くんが最終選考まで残しただけのことはあるな」


 隣に座る望月社長が声をかけてきた。


「ありがとうございます。やはり、素質としては申し分ないですよね」


 そこから、オーディションはお昼休憩を挟みながら、夕方まで続いた。

日が暮れ始める前には全員の最終選考を終了後する事ができた。


 この最終選考を元に誰をオーディションに合格させるかを決定する。

割と責任重大な仕事である。


 俺がオーディションに合格させることはもちろん、不合格にすることも、彼女たちの今後の人生を左右させてまう事になるのだ。


 簡単に決めていい事ではない。

彼女たちも人生を賭けてこのオーディションに臨んできたのである。

その想いには応えなくてならない。


「最終選考、よろしくな」


 審査員全員分の選考シートが俺の手に渡った。

ここから、悩み抜いた末に決断する事になる。


 ここで、関係者席に目を向けた。

そこには、Whiteのメンバーが座っていた。

どうやら、ずっと見ていてくれたようである。


 佐藤社長は午前中の部のみで席を外した。

大企業の社長ともなれば、午前中の時間を空けるだけでも相当な無理をしたに違いない。


「後でちゃんとお礼しなきゃな」

 

 そんな事を考えながら、Whiteのメンバーの元へと向かった。


「3人ともお疲れさま。最後までいてくれてありがとう」

「お疲れさまです。楽しかったです。ありがとうございました!」


 莉奈は笑みを浮かべて言った。

どうやら本当に楽しかったようである。


「今日の四宮さんカッコよかった……」

「確かに、なんかいつもとは違う仕事人の顔してたよね」


 友梨の言葉に美穂が同意する。


「そんな顔してたか?」


 自分ではどんな顔をしてたかなんて分からなかった。


「カッコよっかったですよ!」


 莉奈の笑顔をあえて形容するとすれば『天使様』だろうか。

そのくらいには美しかった。


「ありがとう。さて、帰るよ」


 会場の片付けも一通り終わったので、俺は莉奈たちと一緒に帰る事にした。

駅まで送っていくと、そこからは路線が違う。


「じゃあ、気をつけてな。今日はありがとう」

「「「お疲れさまでした」」」


 俺はホームに向かっていく3人を見送った。

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